特集 ランチお取り寄せプロジェクト「あだちメシ」 職員の福利厚生と地域支援を兼ねて 足立病院 院長 澤田守男  PDF

 新型コロナウイルス感染症拡大第1波の真っただ中だった2020年5月に、医療法人財団足立病院(中京東部)では職員の福利厚生と地域の飲食店支援を兼ねて「あだちメシ」プロジェクトを開始。このプロジェクトは、近隣の飲食店や旅館の方たちに協力してもらい、日替わりでお弁当を提供してもらう。職員への福利厚生も兼ねて、配食希望者にはワンコイン500円で販売し、差額は足立病院が負担するというもの。澤田守男院長に、この企画を立ち上げた経緯や思いなどをお聞きした。

 ――このプロジェクトを開始されたきっかけは。
 そもそものきっかけは、「綿善旅館」(中京区)の若女将である小野雅世さんと「なごみ宿都和」(下京区)の女将である太田佳子さんから、新型コロナの重篤患者を受け入れている大学病院にお弁当を差し入れたいと相談があったことです。私の母校だったことから相談いただいたようで、その件は大学病院につなぐことができました。
 第1波の中、病院職員も気分転換に外でランチを、なんてことはもちろんできません。そんな中、旅館からお弁当を仕出ししてもらうことができるのであれば、ぜひ足立病院でもお願いしたいと考えました。パンデミックのような危機の折は、助け合いの精神で乗り切りたい、できることなら地産地消も目指したいという思いもありました。

 ――職員の皆さんの反響は。
 職員にこんなことを始めるよと伝えた時には、また院長が変なことを言い出したという訝しげな目でしたが(笑)、始めてみれば好評で楽しんでもらえたと思っています。あだちメシの立ち上げ時は綿善旅館となごみ宿都和の2店舗からの協力でしたが、その後地域の飲食店に声をかけて協力してもらえる店を増やしていきました。もちろん、私も飛び込み営業をしました(笑)。企画を説明すると、「それは面白いね」と言ってくれる店主が多く、最終的には日替わりで地域各店の味を楽しめるランチタイムとなりました。
 20年5月から始まったこのプロジェクトは、第1波が収まった6月末にいったん終了。計34日間のお取り寄せで、多い時は50食も注文することができました。
 緊急事態宣言が解除された際には、あのお弁当が美味しかったからと、職員が家族と一緒にそのお店に行ったという話も聞きました。そうした縁が広がっていけばよいなと思いますね。

 ――この「あだちメシ」はNHKの番組「サラメシ」でも放送されましたね。
 実は私、「サラメシ」のファンなんです(笑)。働く大人のお昼ごはんをテーマにした番組なので投稿してみました。コロナ禍でNHKスタッフが取材に来るのではなく、機材一式が送られてきて自身で撮影を、ということでしたが、貴重な経験でした。

 ――足立病院は他にもいろいろな企画をされていますが。
 当院は産婦人科ですが、このコロナ禍で立会い出産を制限せざるを得ません。何とか家族で触れ合う機会を作れないかと、隣接するホテルに協力してもらい、1棟をお借りして、退院後に数日家族で過ごしてもらうホテルステイというサービスを提供していました。食事は、あだちメシで培ったネットワークを活用して、飲食店からケータリングで提供して貰いました。赤ちゃんを囲んでご家族一緒に過ごすことが可能で、入院よりは自由度が高いですし、何かあればすぐに看護師等が駆け付けるという安心感もあります。
 足立病院は、医療に限らず幅広く地域コミュニティのハブになりたいと考えています。そのために何ができるか、毎日「妄想?」を繰り広げています(笑)。YouTube チャンネルを立ち上げたり、最近は、地域の方たちや京都市高齢者接種において、コロナワクチンの接種にもできるだけ協力していこうと考えています。
 「できることは何でもやっていこう」。それが自分たちのモチベーションになるし、職員への刺激になると信じて、畑山博理事長にご指導いただきながら、ポストコロナを見据えて前進していきたいと思います。

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