肛門科の徒然日記 5 渡邉 賢治 (西陣) ナポレオンの悩みは痔核  PDF

 前回は、「太陽王」といわれるルイ14世が痔瘻で悩んでいたこと、痔瘻の手術をしたことを紹介しました。今回は痔核で悩んだナポレオン皇帝について検証します。おしりの病気で悩んでいた歴史上の有名人は多いんですよ。
 ナポレオン皇帝は1815年6月18日、46歳の時にワーテルローの戦いに敗れ、セント・ヘレナ島に流されてその生涯を閉じました。ある「記録」によると、ワーテルローの戦いの2~3日前から血栓性の痔核で悩んでいたとされています。
 この血栓性の痔核は、おそらく血栓性外痔核もしくは内痔核に血栓がつまって腫れた状態の嵌頓痔核だったのではないかと思います。この血栓性の痔核で悩んでいた、ナポレオン最後の戦いまでの1週間を調べてみました。
 まず血栓性外痔核ですが、これは肛門の外側にある静脈叢にストレスなどが加わり、最後は便秘や下痢などで排便をがんばったときに血栓(血豆)がつまってしまい、腫れてとても痛い病気です。ただ、この腫れは徐々に引いて、痛みもとれ、血栓が自然に溶けて吸収されることで必ず治ります。痛みが強い場合や血栓が大きい場合は、手術をして血栓を摘出するとすぐに痛みはとれて楽になります。外痔核なので、押し込むことはできません。
 もう一つは内痔核に血栓がつまって腫れて、脱出してしまった嵌頓痔核の状態です。以前、内痔核は注射でも治すことができるようになったとお話ししました。内痔核だけだと、排便時に出血したり、脱出して押し込まなければならないような状態になったりしても痛みはありません。
 でも、血栓性外痔核ができるのと同じように、いろんな条件が揃って、内痔核に血栓がつまると、とても痛く、押し込むこともできない状態になります。痛みが強いので、すぐに手術をしたり、消炎鎮痛剤の座薬などを使って、ある程度落ち着いてから手術や注射をしたりして治さなければなりません。
 ナポレオンは「1日に3時間しか寝なかった」と言われています。皇帝であり、軍神という自分の立場に重い責任感を持ち、このストレスのため、夜は遅くまで酒を飲み、脂っこい物を食べて昼に寝るといった、乱れた生活を送っていたとのことです。このような生活も血栓性外痔核を引き起こしたり、内痔核の状態を悪くしたりする誘因になったのでしょう。規則正しい生活や食事の節制はどんな病気でも重要ですね。

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