感染不安で受診控えが増加 保団連 学校健診後の治療を調査  PDF

 新型コロナウイルス感染症が拡大した2020年度において、医療現場から「休校等の影響でむし歯の子が増えた」「視力が低下した子が増えた」など健康が悪化したとの報告を受け、保団連は19年に引き続き「2020年度医科歯科学校健診後治療調査」を実施。このほど結果をまとめた。

“受診できない”
児童・生徒は増加

 新型コロナの急拡大が起こった結果、前回調査に比べて、要受診とされた子どもたちの未受診率は、調査対象の歯科、眼科、耳鼻科、内科の全科において増加した。未受診の割合は、歯科62・3%(前回57%)、眼科55・4%(前回47・6%)、視力検査は58・3%(前回56・3%)、耳鼻科健診は57・4%(前回50・8%)、聴力検査41・2%(前回35・0%)、内科健診53・6%(前回50・5%)となり、未受診の児童・生徒の割合は増加している(表1)。
 新型コロナ感染拡大に伴う2020年3月4月の全国一斉休校を受け、学校健診は延期。その後も健診実施に至るまでに時間を要した。加えて、「受診による新型コロナ感染」を恐れて、必要な受診ができていないことなどが背景にあると考えられる。
 京都府の結果を見ると、未受診の割合は歯科73・0%、眼科70・9%、視力検査74・2%、耳鼻科72・6%、聴力検査57・5%、内科73・0%となり、いずれの項目も未受診率は全国平均より高かった(表2)。

新型コロナの影響広がる

 新型コロナによる影響については、40・3%の学校が「影響があった」と回答した。影響事例は、「肥満児童・生徒の増加」「視力低下」「保健室登校の増加」「虫歯のある児童・生徒の増加」など多数報告された。また、不登校、授業に欠席気味、登校をしぶる児童・生徒が多くいるとの声が養護教員から寄せられている。
 さらに、学校休校中の運動不足などに起因すると考えられる骨折などの怪我の増加、心身における体調不良の増加が指摘された。学校休校中、ゲームなどのメディアに費やす時間が増加したことで生活リズムの乱れや視力低下として影響が出ているとの声が寄せられた。歯科では、全体的に口腔内の状況が悪化し、虫歯のみでなく歯垢の付着や歯肉炎が増加していると指摘されている。「コロナ感染が不安」であることを理由にした受診控えも多く発生していたとの報告が寄せられた。

国・自治体・地域での積極的な対策を

 未受診の背景として「健康状態に対する親の理解不足」「共働き」「経済的困難」「ひとり親家庭」「無関心」などがあり、健診後の受診につながらない児童・生徒は家庭に何らかの問題を抱えていることは、前回調査で明らかにした。前述の状況が改善されない中で、今回、新型コロナ感染拡大による影響が加わり、児童・生徒を取り巻く健康状況が悪化していることが分かった。児童・生徒の健全な成長・発達を保障する上で、必要な受診を促すことを目的として、国・自治体・学校・医療関係者・地域が連携した積極的な対応が求められる。

 ※「2020年学校健診後治療調査」は、全国31都道府県の公立、私立の小学校・中学校・高等学校・特別支援学校を対象に2021年2月5日~3月31日にかけて行った。調査票を2万3774校へ送付し、4923校(回収率20・7%)から回答があった。調査結果の詳細は保団連ホームページおよび保団連新聞6月25日・7月5日号をご覧下さい。

表1 要受診率・未受診率(全国)
2020年調査 2019年調査
要受診率 未受診率 要受診率 未受診率
歯科 31.1% 62.3% 32.0% 57.0%
眼科 4.6% 55.4% 5.1% 47.6%
視力検査 36.9% 58.3% 33.3% 56.3%
耳鼻科 13.5% 57.4% 15.7% 50.8%
聴力検査 1.4% 41.2% 1.1% 35.0%
内科 3.7% 53.6% 3.6% 50.5%

表2 京都府の状況
2020年調査
要受診率 未受診率
歯科 26.5% 73.0%
眼科 6.1% 70.9%
視力検査 39.4% 74.2%
耳鼻科 13.9% 72.6%
聴力検査 1.2% 57.5%
内科 4.1% 73.0%

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