医界寸評  PDF

 新型コロナ対策の決め手として、ワクチン接種がしゃにむに推進されている▼接種を身構えた時には肝心のワクチンが届かず、最優先と位置づけられた医療従事者の中、当院で打てたのは高齢者施設用が配布される4日前であった。報道を見るとこれでもまだましだった方か▼その後は溢れるように押し寄せるメールとFAXによる朝令暮改の通知の嵐。ほとんど外に出ることのない高齢者施設入居者が最優先とされた現場を知らぬお役人からのお達し。市との交渉で疑義を唱えても、上からの指示なので…。受け取ってしまえばこちらのものと腹をくくって、まずはウイルスを持ち込むリスクが高い施設職員から打ち始めた▼ゴールデンウイークを潰すしか手がないのだが、市からは冷蔵でしか配送されず、5連休をどう凌ごうかとない知恵を絞る。担当者に耳打ちして頼み込み、自ら受け取りに行くとの条件で冷凍での供給を許してもらった。通販で小さな冷凍庫を買い込み、容量15Aのコンセントを有する我が往診車に搭載。3階のディープフリーザーから取り出したワクチンを抱えて、制限の3分以内に階段を駆け下り車載の冷凍庫へ。この離れ業?をのべ9回繰り返した。5月末に出された冷蔵で1カ月OKの通知。あのヒヤヒヤ劇はいったい何だったのだろう…。戦いはまだまだ続く。(呑鉄童)

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