主張 難病患者の訪問接種体制など 行政への意見・提案取り組む  PDF

 1960年代半ばまで、我が国には難治性疾患に対する特別な取り組みはほとんどなかった。1972年、難病対策要綱が策定され、国が主導する道が開かれた。
 2014年には難病法が成立し、医療費助成の対象となる疾患は指定難病と呼ばれることになった。ところが、この法律には、指定難病を個人の重症度によって認定と不認定に振り分けるという仕組みが導入されたため、3年間の経過措置の後、2018年から不認定、すなわち軽症と認定された患者は助成から除外されることになった。実際京都府で経過措置対象となっていたおよそ1万6000人のうち、2300人以上が不認定とされた。このようにして近年、難病医療政策の後退ともとれる事態が発生した。そもそも難病患者を重症と軽症に明確に区分することには無理がある。軽症とみなされていた患者が、何らかのきっかけで重症化することは十分あり得ることだ。我々は当初より、重症度分類に関係なく、すべての難病患者を医療費助成の対象にするべきであると主張している。
 昨年に始まったコロナ禍では、人と人との交流が制限され、情報やコミュニケーションは不足がちになる。難病患者においては、それらの不足は、即病状に悪影響を及ぼすことになるので、難病患者にも十分な情報が行き渡るような仕組みを構築しなければならない。また、在宅医療を受療中の患者にも確実にコロナワクチンが行き届くような態勢、例えば訪問接種等も整えなければならない。我々は行政と連携しながら、それら体制の構築に向けて取り組んでいるところである。
 いま、この時にも、社会の片隅で、誰に気遣われることもなく、わずかな情報の中、来る日も来る日も、難治性の疾患に耐え忍んでいる人がいるかもしれないという現実に思いを馳せていただきたい。弱者を切り捨てることが社会の是であってはならない。誰かの犠牲の上に成り立つ豊かさは、偽りの繁栄。過去において、いくつもの文明は、それが原因で衰退していった。困った人がいたら手を差し伸べる、これにまさる社会理念など存在しない。
 ともすればコロナ対策に追われて見過ごされがちではあるが、協会は今後も、途切れることなく難病患者に寄り添ってゆく。

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