死んでたまるか20 ただいま、リハビリ奮戦中 垣田 さち子(西陣)  PDF

「政治を変える」という信念

 大田仁史先生が示されたように、障害者のリハビリテーションの3段階のレベルを認識しておくことは大切だ。
 第1は個人のレベルのリハ。私のように医療保険で許される最大限を使ってリハを受けて家に戻ったとしても、全てが違っている。障害受容の回で書いたように、できること、できないことを、冷静に判断して危ない行動を避けることが第一になる。さっとできたことができない。行動自体を控えなければならないのは辛い。ちょこちょこと動き回るのが常だったので、さっと手が出たり足が出たり、その度に「あぁできないんだ」と納得しなければならない。そりゃ気持ちも落ち込みます。
 第2は家族のレベルのリハ。入院などを経て約半年ぶりに障害を負って帰ってきた家族を迎えた家族も、また、自らの家族の一員として彼ら彼女らの変化を受け止めて包み込み、新しい家族に変容しなければならない。
 第3は地域社会のレベルのリハである。障害者と彼ら彼女らを包み込む家族を受け入れる地域社会もまた、障害を持つ人を尊重し、ハンディキャップを理解しともに生きるという新しい価値観を確立しなければならない。昨年来のコロナ禍の中で、医療者に対する驚くべき差別の実態を知るにつけ、あまりの次元の低さに情けない思いがした。よく知らない故の恐怖感の増幅とその裏返しの攻撃性。分かりやすい不幸な結末は、日本のみならず世界の歴史が教えている。
 冷静に地域社会のあり方を模索するプロセスが大切だ。「女性が多いと時間がかかる」と発言してオリンピック組織委員会の会長を辞任した自民党の重鎮がいたが、自由な発言、活発な討論、決定事項の共有等、女性蔑視の問題性以上に民主主義の根本を否定していることなど思い至らないのだろう。
 戦後75年が過ぎたのに、私たちは何をしてきたのか。
 Community-based Rehabilitation(CBR)京都研究会で活動してきたが、CBRは発展途上国の地域民主化政策としてより大きな枠で語られることも多い。我が国も同じレベルだろう。ただ今回の辞任騒動では、若い人たちから批判的なしっかりした意見表明が続いたことは変化の兆しと期待したい。まだまだ努力しなければいけない。地域社会を変えてゆくためには政治を変えてゆかねばならない。今の選挙制度に問題があるとしても、非暴力でより良い解決を求める道はあるはずである。幸い私たちは優秀な国会議員を選出しているではないか。福山哲郎、泉健太、山井和則、前原誠司、穀田恵二、倉林明子、井上哲士の各議員、それぞれに当会の主張を理解し、政策実現にご尽力いただいている。一歩一歩でも、時々の医療政策を議論し確認し積み重ねてゆくことが必要である。
 医療という社会資本を担っている立場で、私たちにできることはとても多い。(完)

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