新型コロナ編 地域医療をきく!15 北丹医師会編  PDF

各々が役割果たしコロナに立ち向かう

 地域の医療者が奮闘しているその実態を聞きたいと開始した「地域医療をきく! 新型コロナ編」。今回は北丹医師会で感染症対策を担当している飯田泰成医師(京丹後市国民健康保険直営大宮診療所)に地域での感染状況と患者対応の体制などについて話を聞いた。

 ――北丹地区の新型コロナの感染状況はどのような感じでしょうか
 昨年8月に米軍基地でクラスターの発生があり、それに関連して北丹地区で1人感染者が出ました。その後は大きな広がりなく、近接する市町で1人、2人と発生することがありましたが単発的でした。それが11月に入って2、3人ながら連日発生があり、12月に入ってから北丹地区内の高齢者施設でクラスターが発生、12月末から1月にかけては5人から10人、毎日のように発生の報告がありました。1月末からは落ち着き、2月は2人の個発例のみとなっています。
 ――地区医師会で体制構築に向けた議論は
 丹後保健所管内で初めてコロナ感染者が出た昨年4月、当初は感冒症状が4日以上続くなら帰国者・接触者センターに相談しましょうとか、個人医院では発熱者は診れないとか、病院からも発熱だけなら3、4日は自宅で経過を見ましょうなどの意見が出ている時でした。
 これでは熱に困った患者さんが診てもらえるところはないのではないかと、北丹医師会で協力しあって発熱外来を開設しようと、医院、病院、保健所、京丹後市が集まって会議が行われました。
 結果、各医院の先生は発熱者を自院で物理的時間的隔離を行い診療するという意見、病院側は必要なPCR検査を行うとともに、医院が対応に困る患者については今まで通りの病診連携のもと紹介してもらえたらとの話になり、特別な発熱外来を設置することなく各医院、病院で発熱者の診療を行うこととなりました。
 ――各医療機関の対応状況は
 11月からは、各医院でも診療・検査医療機関として集合契約を行い、自院でコロナの検査もできるようになったので、発熱者の診療は今まで以上に医院で行うことが可能となっています。
 しかし、北丹医師会内では4病院に加えて、16診療所(その中には週1回の公的診療所も含まれる)という少ない数で診療を行っているため、集合契約して発熱外来時間を設けている医院には大きな負担となっている状態です。
 ――病診連携の状況は
 北丹医師会では人数が少ない分、それぞれの医療機関も顔の見える関係ができており、その信頼関係の上に、病院の方も今まで通りの連携で患者さんを診ていただいています。
 しかし、コロナの入院治療を受け入れていただいている病院(隣接する医師会)は、クラスター発生時など受け入れ枠を超えて診ていただいており、大変な状況であることには違いありません。
 ――地域の課題、問題は何と感じておられるでしょうか
 今クラスターが落ち着いて平穏を取り戻しつつありますが、いったんクラスターが発生すると、都市部のような人的余裕がないこの地域においては、濃厚接触者を調べる保健所も、入院を受け入れる病院も、発熱者が増えて検査する医院も、すぐに許容量をオーバーしてしまうと感じました。でも、それはどの地区でも同じかもしれません。
 ――ワクチン接種体制構築に向けた動きが加速していますが、この問題で課題に感じていること、解決しなければいけないと思っていることは
 ようやく北丹地区でもワクチン接種についてどのように行うか議論が始まったところです。京都府、京都市では住民接種において個別接種を柱に、集団接種も並行して行う方向に進んでいるようです。しかしこの地区では先程示しましたように、病院、医院の数が少なく行政側が希望するような短時間で行うには到底マンパワーが足りない状況だと思います。
 北丹医師会会員の皆さんでできうる接種体制を取るべく、まずはワクチンの供給量に合わせて集団接種、供給が安定すれば可能な範囲で個別接種を並行して行う、ということになるのではないかと考えています。

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