新型コロナ対策で第1次提言 感染症対応の見直しと保健所の再生を  PDF

 協会は、新型コロナウイルス感染症と今後の新興感染症パンデミックを見据え、既存の法制度の枠組みを超えた感染症対策の確立を求めて2本の提言を1月26日の理事会でとりまとめた。今現在、新型コロナウイルス感染症との闘いの只中であることから、第一次提言とし、多くの方々からの意見をいただきながら、第二次提言へとつなげていきたいと考えている(本紙付録に全文)。首相・厚労相・京都の国会議員・京都の医療関係団体等に送付した。

 「新型コロナウイルスを含む感染症パンデミックへの対応体制の見直しについて―国の果たすべき役割の見直しを中心に(第一次提言)」では、まず議論の前提として、新型コロナとの闘いを通じて見えてきたこの国のあり方そのものに関わる問題を2点指摘。一つは、新型コロナとの闘いを支えている医療的条件は、この国のこれまでの皆保険体制が育んできたものだということ。もう一つは、国民生活全体を必要以上に困難にさらした原因は、これまでの新自由主義政治にあるということである。
 さらにパンデミック対応体制に関して、▽病床や収容施設のひっ迫、対応できる人員の不足▽未知の感染症に対する科学的知見および予防、治療での後進性▽政府の施策および自治体の対策と国民へのリスクコミュニケーションの問題▽「新型インフルエンザ対策総括会議報告書」で指摘された体制強化が具体的解決策に移されなかった―などの問題意識をあげ、以下の5点を提言している。
 ①感染症対策に第一線で取り組む各自治体を効果的に支援するために、アウトブレーク対応からパンデミック対応への感染症法の改正が必要②パンデミック対応力強化のための日本版CDC(Centers for Dis-
ease Control and Pre-vention)の創設と人材育成および医療介護分野での標準的感染防御の教育の導入が必要③感染症法の改正を軸とした、新たな国としての体制の再構築により、各都道府県における対応にばらつきや遅れがでないようにすることが必要④非常時には、全ての医療団体・医療機関が災害医療に準じて行政と共同することが必要である。そのためには、地域の医療機関、介護施設および民間の検査機関等の積極的な参画が必要⑤情報の共有と政策決定過程の透明化が必要。
 もう一方の「公衆衛生行政の再確立と保健所再生に向けて(第一次提言)」は、新型コロナウイルス感染症対策の最前線に立っている保健所が、なぜ今日のような窮状に陥っているのかを歴史的に紐解き、改善すべき点を提言した。この中で、感染症対策も含めた公衆衛生政策を国家の責務としての社会保障制度の柱と捉える必要性を述べ、窮状にある保健所の再生が権利としての公衆衛生確立の必須条件であるとした。
 当面、国・地方自治体に求めることは次の5点。①専門職の人員増をはじめ、体制強化を図ること②公衆衛生を担う医師、保健師、薬剤師等の養成ならびに専門教育の充実を推進すること③市町村保健センター、市型保健所においては、対人援助業務を担えるよう体制強化を図ること④政令指定都市においては、全行政区に保健所を再建すること⑤「地区担当制」を復活すること。

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