保険診療 Q&A 418  PDF

在宅で使用する注射薬の取扱い

 Q、骨粗鬆症の在宅患者に対して、月1回、訪問看護ステーションの看護師に訪問してもらい、ボンビバ静注1㎎シリンジを静注してもらおうと思うが、この方法で算定可能か。可能な場合、薬剤料はレセプト「⑭在宅」欄で請求するのか、「注射」欄で算定するのか。
 A、結論から言いますと、看護師に単独で訪問してもらい、薬剤料を算定することはできません。
 その理由ですが、①「⑭在宅」欄で請求できる薬剤は「厚生労働大臣の定める注射薬」(当会発行『社会保険診療提要』392頁に掲載)として定められていますが、この中にボンビバ静注(イバンドロン酸ナトリウム水和物)は含まれていません。②在宅患者訪問点滴注射管理指導料(100点)という点数があり、看護師に単独で3回以上の在宅訪問点滴を医師が指示し、実施した場合、その管理指導に伴う薬剤料を「注射」欄で算定できるという点数があります(『提要』353頁)。しかしボンビバ静注の用法は「1㎎を1カ月に1回、できるだけ緩徐に静脈内投与する」とされていますので、この管理指導の対象となりません。
 来院できない場合は、医師が患家に訪問して注射していただく必要があります。

医師が選んだ医事紛争事例 126
帝王切開をしなかったとクレーム

(0歳女児)
〈事故の概要と経過〉
 母親は2児の経産婦で3人目の陣痛発来にて本件医療機関へ入院した。妊娠37週で順調に経過したが、その後陣痛微弱となり診察。人工破膜を行い、その後アトニン-O?の投与にて陣痛を誘導した。児頭の下降が不良のため、クリステル圧出法を実施し、吸引分娩の準備を開始した。人工破膜時も子宮口はほぼ全開大で、その時点で羊水混濁はなかったが、次第に混濁が生じてきたため、小児科医師をコールして吸引分娩を実施した。1回目の吸引分娩を試みたが滑脱、2回目で児頭発露となったが肩甲難産となった。生下時体重3426g、アプガー指数7点(一時期は1点台)、臍帯血動脈pH 7139で娩出。右上腕・前腕に麻痺がみられた。ただちに小児科医師に引き渡された。その後、本件医療機関の産婦人科医師が付き添い、患者は高次医療機関Aの受診となった。その後は自宅でリハビリ療養となった。
 患者側は、推定出生体重が大きいことが分かっていたので、リスク回避のため帝王切開をすべきであったとして、今後の治療費等の賠償を求めてきた。
 医療機関は、肩甲難産の予測は、母親が3回目の出産であり、巨大児を分娩した既往や糖尿病の罹患もない場合は発生の予見不能である。また、手術手技についても適切な体位を取っており過失はないと主張。ただし、本件医療機関の小児科とA医療機関の初診時の医療費については保留とした。
 紛争発生から解決まで約5年3カ月間要した。
〈問題点〉
 分娩に至る診断に問題はない。患者は帝王切開の必要性を主張しているが、帝王切開をしなければならない条件はなかったと判断された。手技に関しても問題は認められず、事後処置もA医療機関に搬送しており最善を尽くしている。事前の説明に関しても肩甲難産の予見は不可能であり、特に問題はないと考えられる。以上のことから医療過誤は否定された。
 なお、事故後に小児科医師や産婦人科医師が患者側に各々説明をしているが、小児科医師がどのように説明したか記録がなかった。紛争予防のためにも、事後の説明も記録を残しておいたほうがよい。その説明次第で医療事故が発生しても医事紛争に至らない可能性が出てくる。
〈結果〉
 医療機関側が誠意をもって患者側に説明をしたところ、患者側からのクレームが途絶えて久しくなったので、立ち消え解決とみなされた。

ページの先頭へ