主張 社会保障充実で不安の解消を国民の声に耳傾ける政治を望む  PDF

 2020年9月16日、菅内閣が発足した。内閣成立に国民の関与はなく、自由民主党党員投票もなく、12年ぶりの簡易型総裁選の結果である。安倍内閣大番頭の昇格である。菅氏は内閣官房長官として安倍首相の言動をつぶさに見ていた。今後いかに反映させるであろうか。
 第2次安倍政権の評価はいずれ歴史が下す。この政権は社会保障には冷淡であった。「自助・互助・共助・公助」による「地域包括ケアシステム」推進からも判るように、全てを現場に丸投げした。世代対立、職種・雇用形態対立、地域格差をあおり社会保障への歳出を抑制してきた。
 ここに新型コロナが流行し、大都市で感染は拡大した。空洞化した国内製造業を襲ったサプライチェーンの破綻。コロナ対策に必要な医療資材も不足した。国内農業衰退の結果、供給国の輸出制限で農産物も高騰した。新型コロナ対策の国債大増発による財政出動がされている。いずれ償還される。前内閣の継承なら社会保障費が削減される。
 国民は将来が不安で貯蓄している。消費や投資が抑制される。経済活性には社会保障による安心が必要だ。生活不安に加え、治療・予防法が未確立な新型コロナへの恐怖でコロナバッシングが起きる。感染恐怖から受診を抑制。疾病重症化、がん検診率低下による治療遅れも生じる。患者が不安なく受診できる環境を整える必要がある。オンライン診療も有用ではあるが、医師は五感をもって診療している。患者の診察室入室時から第六感が働くこともある。対面診療は必須である。
 社会保障が充実し健康に不安がない社会が待たれる。国民皆保険制度を維持し、どこでも保険証があれば十分な医療を受けられ、居住地にかかわらず医療が提供されることが必要である。地域経済格差による地域別診療報酬は論外である。地域医療構想に基づく病院再編は医療供給格差を拡大し、地域医療が崩壊、地域社会が衰退する。地域の経済格差、交通格差是正を伴わない医師偏在対策は、地域が必要とする医療を提供せず医療格差が拡大する。
 第99代菅内閣総理大臣には、権力の付喪神とならず前内閣時代の国民の声を想起し、九十九にわたり国民の記憶に残る政治を希望する。

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