死んでたまるか 14 ただいま、リハビリ奮戦中 垣田 さち子(西陣)  PDF

「障害受容」って?!

 2018年初秋、私は和歌山県立医科大学附属病院から大阪の関西電力病院へ転院した。その関電病院では、リハビリに明け暮れて、瞬く間に3カ月が経過した。
 在宅への移行を準備して介護保険の申請を行い、大阪の担当者が病室まで来て調査してくれた。リハビリで毎日頑張っているとはいえ、左半身感覚麻痺は変わらず、中心動揺も改善していない。四肢の失調はましになっているとはいえ、寝たきり・全介助で、生活自立からはほど遠い状態である。調査員は、手慣れた様子で要領よく短時間で調査を終えた。結果は要介護5であった。
 回復期リハビリ病棟の規則正しい時間割と、充分な人員配置による生活援助の手厚いサポート体制のおかげで、落ち着いて順調に日々が過ぎてゆく。
 両足の装具LLBは左のSLBだけになり、平行棒内の歩行練習を繰り返し、4点杖での歩行訓練に挑戦していた。もちろんPTのOさんによる左手誘導、左半身介助が組まれてのことではあるが。
 運動麻痺はないのだが、感覚が働かないのはとても怖い。左手、左足など目でしっかり視ながら動かしていかないと、激しい不随意運動が出てしまいとんでもないことになってしまう。実際に車椅子から数度落ちた。おそらく、左半身に体重が乗ってしまい、体全体が引っ張られてズルズルと床に落ちてしまったのだろう。私は何が起こったのか分からなかった。本来なら、身体のバランスが崩れるようなことがあると無意識に正常位を保つように身体自体が補正し安全を図るはずだ。感覚がないということはとても危険な事態にいつでも陥る可能性があるということである。
 脳卒中の5年生存率は50%。多くは転倒による骨折、寝たきりが原因の肺炎、脳卒中の再発も多いとされている。避けられる危ない事態は避けよう。慎重に越したことはない、とあらためて思った。
 私より3カ月早く入院され熱心にリハビリに励んでおられる60代の女性がおられた。ご自宅ビルの階段で頭から落ちて“頚損”に。自分の足で歩いて家に帰りたいとの強い希望を持ち、頑張っておられた。明るい性格の方で、ラウンジに集まる時など中心にいて賑やかにして下さった。病態からしてとても無理な目標だと思われたが、着々と努力を重ね杖歩行を実行された。食事をご一緒する中で、補助具のお箸を使っておられるのを知って、私もできるのではないかと思いやってみたら右手でお箸を使って食べられた。それまではシリコン製のスプーンを使っていたので嬉しかった。右手の不随意運動が常時出ることはなくなり、右手のひら、右足底部のしびれが残る以外は右半身に問題はなくなった。
 在宅復帰、生活期のリハとして、衣服の脱着、ボタンがけの練習など、より具体的なリハに取り組むことが増えてきた。
 3カ月が過ぎた頃からリハの効果が何となく鈍化してきたような感じがしてきた。プラトーといわれる時期に来ているのか。

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