死んでたまるか 13 ただいま、リハビリ奮戦中 垣田 さち子(西陣)  PDF

関電病院 回リハ病棟

関電病院でも転院翌日からリハビリを開始。午前中はPT、そのあとOT、午後3時からPTの計3時間。療法士は各科(各階)に配属され、日本庭園のある3階リハ室は広く、外来の患者さんも含めて100人程が集まる賑やかな訓練室になっていた。大型のマシンが並び、大きなテレビ画面に向かって運転の練習をしている人もいて楽しそう。私も最初の筋力チェックで、和歌山医大附属病院でのリハビリのおかげで、結構筋力がついていることが分かり、いきなりハーネスでつり下げられてトレッドミル歩行にトライ。担当PTのOさんと喜ぶ。「あれっ、いけるやん」。
在宅復帰を目指す回復期リハ病棟のこの病院でのお約束がいくつかあり、食事はラウンジと呼ぶホールに集合してみんなでそろっていただく。パジャマはだめで着替えて洗顔をすませ、身だしなみを整えて朝のごあいさつに。一斉に集まるためにサポートする看護師、看護助手さんたちの仕事ぶりが凄い。排泄のお世話が難問である。右麻痺、左麻痺、車椅子用等といくつものタイプのトイレが設置されているが、適切に適時に44人全員の順番を考えながらこなしていくのは大仕事である。3度の食事ごとに普通に集合できるのは一人ひとりのスタッフが優秀だからとしか言えない。
この病院の最初の印象は、職員が余裕をもって仕事をしていることだった。(株)関西電力の経営で豊かな財力が支えているからかと思ってしまう。病院職員は関電社員で福利厚生などもしっかりしているらしい。資本が支えていることで余裕が生まれ、それが提供する医療の質の確保につながっているのか。協会では企業立病院に対して批判的な目を向けているが、何より余裕が持てない医療法人などへの本気の財政支援が大事なのではなかろうか。
「せやけど腹たちまっせ」と、経営会議などでの議論を話してくれた人もいる。医療のことが分からない上層部に苦労するらしい。
友人の岐阜大教授・高木さんがお見舞いにきてくれたが、病院設置の真の目的は原発労働者への医療提供だと指摘した。彼女の若き日の労作・原発労働者の生活実態の丁寧な聞き取り調査があるのだが、少しでも体調不良が出ると、即関電病院入院となるらしい。「絶対に地元の医療機関には診させない」と言い切っていた。
関電の金品受領問題の凄まじさには呆れるばかりだが、まだ今月にも新たな事例が発覚している。対象者83人、総額約3億7千万円相当だという。これらは、私たちが払う電気料金とは無関係なのか。あからさまな公共料金の私物化の実態を目にすると、公明正大を何よりも大切にする医療のありかたにはほど遠いことを実感する。
転院にもすぐに慣れ、同じ病棟の患者さんや看護師さんたちと女子会ができあがりキャッキャと騒いでいた。かつては男性患者が女性の看護師のお尻をさわるなんてことがあったが、いまや女性患者がすらっとした男性セラピストの魅力的なお尻の話題に花が咲く。どうすればあの筋肉が作れるのか。何のスポーツで? 果ては「誰がさわる?」と盛り上がる。隔世の感だ。隅で勉強していた医長(娘)が「皆さん、それってセクハラですよ」と怖い顔で一喝。
企業立病院だからか、職員には患者はクライアントだという意識がはっきりしていた。コールを鳴らせばすぐ飛んで来てくれる。駐車場、裏口のおじさんに至るまで丁寧で親切だった。気分的には決して悪い訳がない。しかし、医療を受ける側と提供する側が共同して病に立ち向かうという姿勢とは少し違ってくるのではないだろうか。

ページの先頭へ