医師が選んだ医事紛争事例 124  PDF

ブシャール結節に関わる意外な医事紛争

(30歳代後半女性)
〈事故の概要と経過〉
 患者は左第4指PIP関節の痛みを訴えて本件整形外科医を受診した。PIPの単関節の変形性関節症の可能性から、ブシャール結節を疑い、腫脹・熱感・疼痛の関節炎症状から、シーネ固定をして消炎鎮痛剤を処方したが、その後しばらく受診はなかった。患者が再診した日は担当した医師が不在であったため、代診医が診察した。患者はブシャール結節のことを気にしていたようなので、診察した医師は心配ないことを伝えた。その際に患者は、初診時の痛みは2~3週間で治まったとも伝えていた。
 しかし、患者はその後弁護士を介して、ブシャール結節は誤診で、そのショックのあまり失職したとして、額は明確にしないが賠償請求をしてきた。
 患者は再診時に代診医が担当医の診断を否定したかのように受け取ったようだ。もしそうであるならば、医療機関側は、それは全くの誤解で、誤診・医療過誤はなかったと主張した。また担当医は、患者側弁護士に対し不当な訴えをしたものとして逆に訴えたいぐらいとの意向であった。
 紛争発生から解決まで約1年4カ月間要した。
〈問題点〉
 医療機関側から事実経過の説明や主張を聞く限り、患者側の主張する失職等についても医療機関側の医療行為(診察・診断・処置・説明を含む)に問題は認められず、医療過誤を指摘できるようなことも全く認められなかった。
 患者は代理人である弁護士を介して苦情の申し立てをしていたが、弁護士を介しても稀に言いがかりとしか表現できないようなクレームをつけてくることがあるので、医療機関側は、常に医学・医療的に確認を取り、毅然とした態度で応じるべきである。
 特に最近は、損害保険などで弁護士特約が付帯できるものがある。こうしたことからか、弁護士に依頼すること自体のハードルが下がっているのではないか。
 例えば交通事故で受診した被害者側からも、本件のように単独に医療過誤を訴えたり、交通事故の加害者との共同不法行為として訴えたりする可能性も否定できず、ますますの注意が必要である。
〈結果〉
 医療機関側が弁護士を介して、医療過誤がないことを伝えたところ、患者側のクレームが途絶えて久しくなったので、立ち消え解決とみなされた。

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