私の宝物「みてね」 西垣 哲哉(福知山)  PDF

 昨年、娘が結婚しました。今年1月には男の子を授かりました。
 お産の時は、出血が多く、青白い顔をして黙々と子どもにおっぱいを飲ませている様子をみますと、畏れ多い母の姿を感じました。
 生まれたての赤ちゃんは、おっぱいを飲む時以外は、ほとんど眠っていて、時間ごとに起きては、むずがっておっぱいを飲むとまた寝てしまいました。
 娘夫婦は所作がないのか、少し心配してか、寝た子に起きて、起きてと声をかけることがありました。
 しばらく経つと、赤ちゃんは父母に反応して、ゆっくりにや~っと笑うようになりました。ひと月経って、娘が新居に帰ると私たち夫婦の日常が戻ってきました。3月になって、娘からLINEで孫のアルバムの招待が届きました。そこにあるURLというのをクリックすると「家族アルバムみてね」というアプリが入りました。
 好きな時に、スマホを開けて、「みてね」というロゴのアイコンをクリックすると、鮮やかな色の服やおもちゃ、毛布に囲まれた孫がにやっと笑ったりあやされて視線をうつしたりしている様子が手に取るようにわかります。日々に動きが活発になり表情が豊かになっていく孫の姿が毎日のように追加されていくと、「スマホの孫は今日もすくすくと育っています」みたいな感じです。
 2人のばあやは次々とコメントしますが、2人の爺やは恥ずかしいのか、やや黙り気味。
 驚いたのは、孫より娘の笑顔で、こんなにうれしそうな顔は見たことなかったなあというほどの表情で笑っています。婿さんも「私は果たしてこんなに娘をかわいがったろうか」というあやし方です。
 もしかすると、私が生まれた時もこんなにかわいがられたかもしれないとか、かわいがられたはずやなあと思うと変な感じがしてきます。
 今日もスマホの中で孫が笑っています。

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