HPVワクチンのその後 政策部会部員 礒部博子  PDF

 新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るっている。現在、ワクチンの話というと新型コロナウイルスのワクチン開発の話かと思われる方も多いと思いますが、今私が皆さんに知っていただきたいのは、子宮頸がん予防のためのHPVワクチンの話です。
 HPVワクチンとは2006年に開発された初めての子宮頸がん予防ワクチンで、WHOも接種を推奨し、約140カ国で使用されています。
 日本では、2013年の改正予防接種法施行に伴い、中・高生の女子を対象に、定期接種が始まりました。しかし、接種後に疼痛や運動障害が生じたと訴える事例が相次いでメディアで報じられ、定期接種化から2カ月後の13年6月には定期接種に定められたまま、厚労省より「一時的に積極的接種勧奨を停止する」という決定が通知されました。積極的な勧奨とならないよう自治体に注意を喚起し、接種後の事例の調査などを終えて「積極的な勧奨の再開の是非をあらためて判断する予定」としていました。
 しかし、その後事態の進展はなく、現在も積極的勧奨の差し控えは続いています。そのため、対象者に接種を促すはがきも送られていない状況で、現在国内の接種率は1%を下回るとされています。このような状況下で毎年約1万個の子宮が失われているという現実は、これ以上放置することができません。
 そこで保団連は、まず「HPVワクチンを巡る現状と課題」について、シンポジウムを行い、大阪府保険医協会が会員に対して行ったHPVワクチンアンケートの調査結果などを参考にして討議を進めた結果、四つの課題が明らかになりました。
 ①基本的には子宮頸がん撲滅が重要である②HPVワクチン接種後に重い副反応を疑う症状を有する方々に対する十分な医療ケアを行うことが重要である③国民に正しい情報提供を行う④厚労省での論議を促す必要がある―。
 これらの課題のもと、保団連では「子宮頸がん撲滅を目指す取り組み強化を求める意見書」を厚労省に提出するとともに、各課題に対し積極的に取り組んでいくことを今後の目標としています。
 現在のこのような状況をみなさんはどう思われますか?

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