医師が選んだ医事紛争事例 122 骨折での固定法が争点となったケース  PDF

(20歳代前半男性)
〈事故の概要と経過〉
 患者が自ら壁を殴り右手痛が生じたため、その2日後に本件医療機関に受診。右第5中手骨遠位部の骨折(転位軽微)を認め、第4・5指をテープでのみ固定するバンデージ固定を行い、安静にしておくよう療養指導した。医師の記憶にはなかったが、看護師によると、1週間から10日後に再受診するようにも指導したとのこと。患者は17日経過してから右手が腫脹したと再受診。約40度の屈曲変形が認められたので、A医療機関に手術を目的に紹介をした。
 患者側は、両親が中心となって、外固定をもっとしっかりしていれば、転位はなかったはずとして医療費等を請求してきた。
 医療機関側は、よりスタンダードな固定法として、副子をつけるようなことも考えられようが、骨折の程度が軽いと判断して副子はつけなかった。また、患者も「安静に」との療養指導を守らず、パチンコやマージャンをしていた。そのことも転位の原因の一つと考えられるとの見解だった。
〈問題点〉
 骨折治療では、整復・固定・後療法(リハビリテーション)を行うが、当初より手術療法が必要なものを除き、まず保存的治療から開始する。整復不足や固定経過時の変形の増大、骨癒合の遷延などが生じたものでは、手術などが追加される。
 本件では、転位が軽微であり、その後の変形増大が問題とされているので、医療過誤の有無が争点となるのは固定法についてとなる。副子を装着する固定法でなく、テープ固定をして安静にするだけの療養指導では不十分ではないかと患者側に主張される可能性もあろう。ただし、患者が再受診した時のX―P検査像では、骨方の転位は固定不足のために徐々に屈曲変形したものと言うより、再度外力が加わり大きく変形したように見え、その際に腫脹と痛みが認められたことは、患者が再度手をぶつけた等の推測もでき、その事実を隠して全て医師の責任に転嫁しているような疑いもあった。
 また、転位や変形の増大があっても、骨癒合したあとの四肢関節の機能が十分であるような場合には、そのまま経過をみるのが良いのか、手術を追加してできるだけ解剖学的な肢位に戻すほうが良いのか、患者によく説明し、本人の思いや自己決定を確認しておくことが重要である。
 紛争発生から解決まで約3年1カ月間を経過した。
〈結果〉
 医療機関側は過誤を認めず患者側にその旨を伝えたところ、患者側のクレームが途絶えて久しくなったので立ち消え解決とみなされた。

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