新型コロナウイルス感染症拡大による施設基準管理への影響調査(結果)  PDF

目 的
 新型コロナウイルス感染症の拡大による施設基準管理への影響を明らかにすること。

調査方法
方法:調査票を郵送し、郵送又はファクシミリで回収
対象:京都府内の病院(160病院)
回答:84病院(回収率:53%)
期間:2020年6月10日~30日

まとめ
 京都府内の半数以上の84病院から回答が寄せられ調査に対する関心が非常に高かった。
 新型コロナウイルス感染拡大による影響により、約4分の1の病院で、満たさなくなった(満たさなくなると危惧する)施設基準が発生した。これは新型コロナウイルス感染症患者の入院受入を行っているか否かにかかわらず発生していることが分かった。
 満たさなくなった(満たさなくなると危惧する)施設基準は、「人員配置基準」「該当患者数や実施件数等」「平均在院日数」「重症度、医療・看護必要度」に関するものが多く、新規入退院の動きの停滞・制限や人員確保困難等が原因で発生している。
 新型コロナ禍の状況にあっては、入退院等患者の動きを含む診療の状況が平常時とは明らかに異なることから、通常の施設基準の運用には限界があり、厳密に適用すべきでない。新型コロナウイルス感染症患者の受入を行っているか否かにかかわらず、新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いとしての施設基準の特例を拡大するなど、少しでも影響があると考えられる場合は、施設基準を満たしているとみなされるべきである。
 またこのような状況から、新型コロナ禍の状況下においては、施設基準の運用確認を目的に実施される適時調査等の実施は差し控えられるべきである。

調査結果
〈回答病院の概要〉
1.回答病院の病床種別(複数回答)
 回答を寄せた病院は、一般病床を保有する病院が最も多く69病院、82%。次いで療養病床の保有が多かった(32病院、38%)。結核病床の保有は6病院(7%)、感染病床の保有は5病院(6%)であった。なおその他は、すべて介護医療院であった(図1)。
2.回答病院の許可病床数
 回答を寄せた病院が保有する病床数は、100~199床の中規模病院が最も多く31病院(37%)で、次いで99床以下の小規模病院が多かった(23病院、27%)(図2)。
3.新型コロナウイルス感染症の入院受入
 新型コロナウイルス感染症患者の入院受入状況は、受け入れている(受け入れたことがあった)病院は16病院、19%であった。一方受け入れていない(受け入れたことがなかった)病院が65病院、77%であった。その他は、感染疑い患者を受け入れた(検査結果は陰性)病院であった(3病院、4%)(図3)。
4.帰国者・接触者外来や発熱外来の設置
 帰国者・接触者外来や発熱外来の設置については、設置している(設置していたことがあった)病院は29病院、35%であった。一方設置していない(設置したことがなかった)病院が53病院、63%であった。
 その他は、2病院(2%)で「通常外来であるが、疑い患者は隔離部屋で対応している」「外来でトリアージを行い、発熱等の患者に対し、隔離の上で診察を行っている」との回答であった(図4)。
〈施設基準管理について〉
5.新型コロナウイルス感染症拡大により満たさなくなった(満たさなくなると危惧する)施設基準
 新型コロナウイルス感染症拡大により満たさなくなった(満たさなくなると危惧する)施設基準があると回答した病院は22病院(26%)、ないと回答した病院は57病院(68%)であった。わからないと回答した病院も5病院(6%)あった(図5)。
 新型コロナウイルス感染症患者の入院を受け入れた病院(16病院)に限ると、満たさなくなった(満たさなくなると危惧する)施設基準があると回答した病院は7病院(44%)。受入はない(疑い患者のみを含む)と回答した病院(68病院)に限ると、満たさなくなった(満たさなくなると危惧する)施設基準があると回答した病院は、15病院(22%)であった(図6・7)。
 新型コロナウイルス感染症患者の入院を受け入れた病院の方が、満たさなくなった(満たさなくなると危惧する)施設基準があると回答した割合が高いものの、受け入れていない病院であっても2割強で影響が出ていた。
6.満たさなくなった(満たさなくなると危惧する)施設基準の具体的な内容(複数回答)
 満たさなくなった(満たさなくなると危惧する)施設基準の具体的な内容は、「人員配置基準」に関するものが最も多く10病院(46%)、次いで「該当患者数や実施件数等」に関するもので9病院(41%)。「平均在院日数」に関するものが7病院(32%)と続いた。
 中でも「平均在院日数」に関しては、7病院すべてが新型コロナウイルス患者受入病院以外の病院であった。
 その他は、療養病棟入院基本料の在宅復帰機能強化加算、地域包括ケア入院医療管理料等いずれも入院料に関してであったが、より具体的な施設基準要件の回答がなく、その他に分類した(図8)。
〈具体的な施設基準の内容〉
・地域一般入院料の平均在院日数
・急性期一般入院料の平均在院日数
・入院料の必要看護補助者数
・入院料の必要看護配置数
・病棟薬剤業務実施加算の専任薬剤師の病棟業務時間週20時間以上の要件
・認知症ケア加算3の届出病棟における2名以上の院外研修修了看護師配置
・急性期看護補助体制加算25対1の5割以上がみなし看護補助者以外
・看護職員夜間12対1配置加算の夜勤看護職員配置数
・救急搬送看護体制加算1の専任の看護師複数名配置
・入院料の看護職員夜勤時間
・急性期一般入院料の重症度、医療・看護必要度
・看護補助加算1の重症度、医療・看護必要度
・障害者施設等入院基本料の難病患者等比率
・特殊疾患入院施設管理加算の難病患者等比率
・地域包括ケア病棟入院料の自宅等からの入院患者割合
・入退院支援加算1の連携医療機関との年3回以上の面会
・地域医療体制確保加算の救急搬送件数
・新生児集中治療室管理料の手術件数
・精神科救急入院料1の精神疾患に係る時間外、休日または深夜における診療件数の実績
・精神科急性期治療病棟入院料の新規患者数
・ダビンチ等の手術関連の年間実績
・地域包括ケア病棟入院料の緊急入院患者受入人数
・地域包括ケア病床の往診件数
・療養病棟入院基本料の在宅復帰機能強化加算(在宅復帰率または該当入院患者割合)
7.施設基準が満たさなくなった(満たさなくなると危惧する)原因(複数回答)
 施設基準が満たさくなった(満たさくなると危惧する)原因は、「入院患者数の減少」が最も多く12病院(55%)であった。次いで「外来患者数の減少」「高齢者施設等、退院先の新規受け入れの停滞」「その他」でそれぞれ8病院(36%)となった。
 新規の入院患者数が減少するとともに、後方施設等への退院調整が滞ることで、平均在院日数の延長や、重症度、医療・看護必要度の該当患者減少につながったと考えられる。また「外来患者数の減少」も新規入院患者の減少に影響したと考えられた。
 また「スタッフの確保困難」を6病院(27%)が原因として挙げ、自由意見では「日常業務の増加で退職者が増加。人員減少により業務負荷増大でさらに退職者あり」といった声も寄せられた。
 なお「その他」には、入退院の制限や紹介患者の減少が原因として挙げられていた(図9)。
〈その他の具体的内容〉
・リスク軽減のため新規入院の病棟を急性期病棟に集約しているため。
・新規受入患者について、新型コロナウイルスの感染疑いがある患者の受入を行わなかったため。
・近医診療所からの紹介が減ったため。
・疑い患者の発生でも、入退院の一時停止など、通常の状況とは異なる状況となるため。
・コロナ病棟への入室制限のため。
・Wワークしているパートの補助者が、アルバイト先でコロナが発生し、濃厚接触者となり、自宅待機を余儀なくされたため。
・緊急手術以外の手術が延期となったため。
・救急車搬送件数の減少。
8.自由意見・要望等
 寄せられた自由意見・要望等は以下の通りであった(抜粋)。
〈診療報酬・施設基準関連〉
・各種施設基準の研修要件のオンライン化を認めていただきたい。特に院内研修の実施の際にたくさんの人を集められないため。
・新型コロナウイルス感染患者に対応する看護師配置の結果生じた、各種施設基準の看護配置を満たせなくなったことに対する柔軟な取扱いを要望したい。
・新型コロナウイルス感染患者受入に対する診療報酬の充実や検査に対する柔軟な算定を要望したい。
・新型コロナウイルス感染患者(疑い含む)への公費適用日数や公費対象の拡大を要望したい。
・当院も一時的な減少から継続的な減少になっているのが、外来患者数。特に時間外を含む救急患者数である。まだどの部分が継続的に減少しているかがわからない。
〈従事者確保〉
・コロナウイルス感染症により、日常業務の増加で退職者が増加。人員減少により業務負荷増大でさらに退職者あり、と負のスパイラルがあり。
・医療従事者としての感染対策は今まで以上に意識していく。また感染の早期収束を目指し、職員の安心・安全を確保していきたい。

図1 回答病院の病床種別
図2 回答病院の許可病床数
図3 入院受入数
図4 帰国者・接触者外来や発熱外来の設置
図5 感染症拡大により満たさなくなった(危惧する)施設基準〈全体〉
図6 感染症拡大により満たさなくなった(危惧する)施設基準〈受入有〉
図7 感染症拡大により満たさなくなった(危惧する)施設基準〈受入無〉
図8 満たさなくなった(満たさなくなると危惧する)施設基準
図9 施設基準が満たさなくなった(満たさなくなると危惧する)原因

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