シリーズ 環境問題を考える 146 気候変動から気候危機へ  PDF

 今年の「環境・循環型社会・生物多様性白書」(環境白書)で、気候変動の影響とみられる災害が激化していることから、人類を含む全ての生き物の生存基盤を揺るがす「気候危機」が起きているとし、環境相は「環境省として気候危機宣言をする」と述べた。白書では、脱炭素社会への移行が最重要で、再生可能エネルギー活用などの取り組み強化を求めた。
 また、国連広報センターは「気候危機―勝てる競争」として以下を公表した。「気候変動は現代の危機を決定づけており、私たちが恐れていた以上の速さで進んでいます。地球上に、気候変動の壊滅的影響から無傷でいられる場所はありません。気温の上昇は環境破壊や自然災害、異常気象、食料不安と水不足、経済の混乱、紛争やテロを助長しています。海面は上昇を続け、北極氷原は融解し、サンゴ礁は死滅へ向かい、海洋の酸性化が進み、森林は山火事で失われています。これまで通りのやり方を続けていたのでは不十分です。気候変動の無限のコストが取り返しのつかないほど大きくなる中で、今こそ大胆な集団行動を起こす時です」。
 地球温暖化では「何十億トンものCO2が毎年、石炭や石油、ガスの生産により、大気中に放出されています。人間の活動は、記録的な水準の温室効果ガス排出をもたらしており、その勢いはまったく衰える兆しを見せていません。現在の気温は産業革命以前の水準を少なくとも1℃上回っており、科学者たちが『受け入れがたいリスク』と警告するレベルに近づいています。私たちが全世界的な排出量を削減できなければ、気温は2100年までに3℃も上昇し、私たちの生態系にさらに取り返しのつかない損害が生じる恐れがあります」。食料不安と水不足では、「その影響は主として、貧困層や弱者層に及びがちで、世界の最富裕国と最貧国との経済格差は、さらに広がる可能性が高くなっています」。
 新たな極限では、「異常気象に関連する災害は、その頻度と激しさがともに増しています。どの大陸も無傷ではなく、熱波や干ばつ、台風、ハリケーンは全世界で猛威を振るっています。現在では、災害の90%が気象・気候関連とみなされており、2600万人が貧困に追いやられています」。そして、紛争の媒介役として、「気候変動の影響は、土地や食料、水などの資源の獲得競争を激化させ、社会経済的な緊張状態を高めるほか、多くの避難民発生につながることも多くなっています」。
 今後の道のりとして、「科学は私たちに、気候変動を疑う余地はないことだけでなく、その流れを断ち切るのも手遅れではないことを教えてくれます。そのためには、食物の育て方、土地の使い方、物資の輸送方法、経済の動かし方など、社会のあらゆる側面で根本的な変革が必要となります」としている。(引用文は一部省略している)
(政策部会・飯田 哲夫)

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