代議員月例アンケート126  PDF

「20年度診療報酬改定の不合理点」 と「新型コロナウイルス感染拡大防止にかかる診療報酬上の臨時的対応」 について
実施日=2020年5月22日~6月5日
対象者=代議員・予備代議員174人、回答数=68(回答率39%)

コロナ禍口実にオンライン診療の
安易な拡大容認できず

点数の複雑化、細分化に悲鳴

 回答者68人の内訳は内科系70%(47人)、外科系30%(20人)だった。なお、無回答者については集計から除いた。
 20年度診療報酬改定が実施され2カ月が経過した。診療報酬抑制のために点数表をむやみに複雑化する一方で、レセプト記載事項を多数追加する等、医療機関に負担を求める改定となった。
 これに対して不合理と思う点を質問したところ、12人から回答があった。
 「初・再診料が上がらない、低い」(2人)、「腹部超音波エコーの領域部位の記載」(2人)、「点数表の複雑化は単に抑制のためとしか思えない」「点数表が細分化されすぎて、どの項目で請求して良いか分からない」「花粉症(アレルギー性鼻炎等)が何故特定疾患とならず指導料が算定できないのか」「訪問診療料(Ⅰ)の『2』の算定期間制限について、実際には併診が長引くケースがある」「診察は対面による丁寧な問診、身体診察が基本であり『手抜き診療』であるオンライン診療のなしくずし的な拡大は決して容認できない」「電子カルテ未導入で電子化が進んでいない病院にとって、データ提出等への対応に大変苦慮する」などの意見が寄せられた。
 意見を参考にして不合理是正要求案をとりまとめたい。

医療機関を安上がりに使おうとする
政策には断固反対

 5月29日の経済財政諮問会議資料によれば、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を踏まえたオンライン診療(電話や情報通信機器を用いた診療)は全国平均で13・2%の医療機関が実施しているが、京都府は最も少ない3・5%である。
 今回の診療報酬上の臨時的対応に関するアンケートでは、臨時的対応を実施している医療機関が多いことを前提に組み立てたことから、分母の小さい結果となってしまったことを前置きしておく。
 まず電話等による初診を実施、算定しているか質問したところ、「している」13%(9人)、「していない」87%(59人)であった(図1)。「算定している」9人に医学的に問題を感じる例の有無について質問したところ、「例がある」89%(8人)、「例はない」11%(1人)との結果であった。
 また、「算定している」9人に288点ではなく214点を算定することをどう思うか質問したところ、「288点が算定できるべき」63%(5人)、「214点で妥当」38%(3人)という結果であった。
 次に、慢性疾患等の患者について電話等により再診を行った場合で、特定疾患療養管理料など限られた医学管理や通院・在宅精神療法について147点を算定できる取扱いを実施、算定しているか質問したところ、「している」34%(23人)、「していない」66%(44人)であった(図2)。「算定している」23人に医学的に問題を感じる例の有無について質問したところ、「例がある」52%(12人)、「例はない」48%(11人)との結果であった。
 また、「算定している」23人に告示点数ではなく一律に147点を算定することをどう思うか質問したところ、「電話等でも通常の点数が算定できるべき」61%(14人)、「147点で妥当」39%(9人)という結果であった。
 次に、オンライン診療の算定要件を緩和して、算定を容易にすべきだという意見がある一方、普及により医療機関が安上がりに使われてしまう懸念もあるが、算定要件の緩和、算定の容易化についてどう思うか質問したところ、「賛成」17%(11人)、「反対」64%(41人)であった(図3)。うち内科系では「賛成」22%(10人)、「反対」60%(27人)、外科系では「賛成」0、「反対」78%(14人)となり、外科系では賛成はなかった。
 その他の意見では、「離島、へき地に限定すべき」「条件を絞っての普及には賛成」「必要なオンライン診療はすすめるべき」「治療を補完的に強化する位置づけだ」「感染疑い例では仕方ないと思うが、管理料は同点数にすべき。そうしないと、点数の低い電話再診等に患者が流れていく可能性がある」等が出された。
 新型コロナウイルス感染症患者(疑いを含む)の外来診療を行った場合、院内トリアージ実施料(300点)が算定できるが実施、算定しているか質問したところ、「している」25%(17人)、「していない」75%(50人)であった(図4)。うち内科系では「している」36%(17人)、「していない」64%(30人)に対して、外科系では「している」0、「していない」100%(19人)となり、外科系で「している」はなかった。
 算定している回答者に困りごとや意見を質問したところ、「防護服・防護具が不足して困っている」(3人)「防護服・防護具が300点ではまかなえない。赤字になってしまう」「かかっている手間を考えれば500点ぐらいでも」「発熱患者全員に算定するか悩んだ」「何をもってのトリアージなのか判断できない」等が出された。
 最後に臨時的対応に関して自由意見を訊いたところ、17人から回答があった。
 「オンライン診療は高齢者の診療には不適当」「オンライン診療の継続には医学的疑問を感じる」「オンライン診療の普及は致し方ないが医療機関を安上がりに使おうとする政策には断固反対」「我々は患者を直接診て触れて診療すべきだ」「整形外科単科だが電話診療にはなじまない」「保険点数を一般診療でも2倍にするよう政府に訴えてほしい」「医療経営悪化が叫ばれ、医療でも休業補償、収入補償を行うべき」(3人)「PCR検査等の体制を早く作ってほしい」「入退院が減少しているため平均在院日数の緩和を強く望む」等が出された。
 協会としては、点数を抑制し、医療機関を安上がりに使うために、コロナ禍を口実としたオンライン診療を安易に拡大しようとする動きには反対の立場だ。今回のアンケート結果をもとに運動を進めていきたい。

図1 電話等による初診の実施・算定
図2 慢性疾患等の患者の電話等による再診の実施・算定
図3 オンライン診療の算定要件の緩和・容易化
図4 院内トリアージ実施料の算定

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