超高齢社会に向け転倒・転落対策が重要  PDF

 2019年度(19年6月~20年5月)も会員各位からさまざまな医療事故に関する報告・相談が寄せられた。
 19年度の主な特徴としては、①医療事故報告件数は前年度より増加し、37件となった②事故報告数の病診比率は、病院の割合が診療所の3倍近くとなった③複数回の医事紛争を報告する医療機関は最も多いところでは年間4件の報告があった④全事故報告中、97・3%が解決に達しており、依然として高水準を保っている―などが挙げられる。
 19年度は「転倒・転落」をテーマとして掲げ、講習会や講演会を企画していたが、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため止むなく開催延期とした。転倒・転落は、今後の超高齢社会を見据えると医療安全対策において重要な位置を占めると予想できる。代議員対象月例アンケートでは、一定「対策を講じている」と回答した医療機関が大半を占めたが、それでも転倒・転落の相談は後を絶たない。院内で転倒・転落が発生すれば、医療機関側に管理ミスがなくとも、患者側は負傷したという事実のみに注目。医療機関側の責任を追及するケースもあり、協会としても解決しがたい事故の一つとして捉えている。
 19年度、開催延期とした講習会等については、現在開催に向けて準備中である。講習会では、院内で転倒・転落が発生した際の対応を含め、転倒・転落が起こることを想定した上での取り組みなどについて、紹介できればと考えている。なお、講習会の延期に伴い協会ホームページに過去に発行した「医療安全を身につけるために―医療安全研修DVD」の中から「転倒・転落」に関する事例を掲載しているので、院内学習等に活用していただきたい。
 さらに、19年度は協会が医療安全対策に取り組んで60周年を迎えた記念として「医事紛争事例集―医師が選んだ60事例」を発刊した。また、現在は「医療安全を身につけるために―医療安全研修DVD PARTⅢ」の発刊に向けて編集中であり、DVD発行の際にはぜひご購入いただき、日常診療での「安全」と「安心」を一層高めていただきたい。
 協会は長年、医療安全対策に取り組んでいる。転倒・転落に限らず、医療事故など患者とトラブルが生じた際には、ぜひ協会にご相談いただきたい。

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