2020診療報酬改定こうみる 6  PDF

多焦点眼内レンズ用いた白内障手術が選定療養に
眼 科理 事 辻 俊明
 多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術は2008年から先進医療の対象とされ、手術費用と材料費は自己負担(片眼数十万円)であり、その他の検査料、薬剤料、入院料は保険適用される仕組みであった。患者が民間保険の「先進医療特約」に加入していた場合、後から給付を受けることで自己負担分は実質無料となっていた。しかし20年4月1日以降、多焦点眼内レンズを用いた白内障手術は先進医療から外れ、選定療養となった。もともと先進医療は、将来保険適用とするべきかどうか評価されるものである。結局多焦点レンズは保険導入されることなく、先進医療から選定療養になったわけである。保険導入しない理由を中医協は、単焦点眼内レンズに比して優越性が認められないためとした。
 日本の医療制度では健康保険による診療と自由診療を併用した場合、健康保険は適用されず、全てが自由診療となる。しかし、先進医療あるいは選定療養に認定されると、保険適用外の診療と保険適用の診療を併用することができる。したがって、この二つは合法的な混合診療という言い方もできる。先進医療では、手術費用とレンズ代が自己負担であったが、選定療養では多焦点レンズ代のみが自己負担となる。厚労省は、眼鏡装用率の軽減に係る部分を「特別の料金」として患者から徴収可能としている。「特別の料金」には、これ以外に角膜形状解析検査(105点)とコントラスト感度検査(207点)の二つが該当する。したがって、この二つの検査は患者から徴収すべきであり、保険請求できないので注意が必要である。保険外併用療養を認めることになった今回の措置が、皆保険制度を揺るがすものに拡大しないよう見守る必要もありそうだ。
 他に手術点数に若干の見直しがあった。そのほとんどが増点となっている。主なものは以下である。マイボーム腺梗塞摘出術、霰粒腫摘出術、瞼板切除術、結膜結石除去術、結膜下異物除去術など。ただし通常の白内障手術等に変更はなかった。

比較的頻回な手術などが増点や新設に
耳鼻咽喉科 牛嶋 千久
 2020年度の診療報酬改定で耳鼻咽喉科として注目すべきは、処置および手術につきいくつかの見直し、新設が行われた点である。診療所で日常的に算定されている耳管処置(1は36点、2は24点)、鼻処置(14点)、口腔・咽頭処置(14点)、間接喉頭鏡下喉頭処置(32点)がそれぞれ増点された。しかしながら、日耳鼻の全国調査から導き出したこれら処置の増点によるレセプト1枚当たりの総点数に対する影響を見るとわずか0・7%にとどまっている。また、耳処置の点数はいまだ両側施行しても25点のままであり、さらなる改定を要望する。
 手術についてはK386―2輪状甲状靱帯切開術1970点、K439下顎骨悪性腫瘍手術の2切断(おとがい部を含むもの)79270点が新設。また、K463甲状腺悪性腫瘍手術に2切除(頸部外側区域郭清を伴うもの)26180点、4全摘および亜全摘(片側頸部外側区域郭清を伴うもの)35790点、5全摘および亜全摘(両側頸部外側区域郭清を伴うもの)36790点が新設された。さらにK374―2「鏡視下咽頭悪性腫瘍手術(軟口蓋悪性腫瘍手術を含む)38740点が認められたが、算定には施設基準への適合を要する。ほかにも鼻腔粘膜焼灼術1080点、咽頭異物摘出術1簡単なもの500点、鼓膜切開術830点など比較的頻回に施行される手術点数の増点があり評価できるものと考える。また、鼓膜穿孔治療剤の保険適応に伴い鼓膜穿孔閉鎖術(一連につき)も1900点に増点されている。
 医学管理料関連では、18年9月1日保険収載され、準用点数で算定されていた在宅中耳加圧療法がC120同指導管理料1800点として新設された。またB000―14高度難聴指導管理料に注釈3が追加新設され、人工内耳埋め込み術を行った患者に対して、人工内耳用音声信号処理装置の機器調整を行った場合に800点を所定点数に加算することができるようになった。

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