政策解説 厚労省、外来医療の機能分化で方向性示す かかりつけ医機能と医療資源重点的に活用する外来担う医療機関の二分法  PDF

 厚生労働省の医療計画の見直しに関する検討会では「外来医療の機能分化」が論じられている。2月28日に開催された第18回検討会で厚労省が示した【検討の方向性】には「実際に提供されている外来医療の機能に応じて、地域において、それぞれの医療機関が、どのような機能を発揮すべきかという役割分担を明確化し、『かかりつけ医機能』を担う医療機関から医療資源を重点的に活用する外来を担う医療機関につないでいくなどの機能分化・連携」とある。
 注目したいのは「かかりつけ医機能」と「医療資源を重点的に活用する外来を担う医療機関」という新たな二分法である。

医療資源投入量で判断?

 数年来、国が進めてきた病床機能分化は、地域医療構想によって具体化され、都道府県単位に地域へと持ち込まれた。一般病床・療養病床を有するすべての入院医療機関は、自らの持つ病床の身の振り方の決定を求められ、高度急性期・急性期・回復期・慢性期のいずれかの「機能」の選択を迫られた。機能を区分する考え方に用いられたのは「医療資源投入量」=レセプト点数だった。そこから類推されるのは、同様の考え方がかかりつけ医機能を担う外来医療機関と医療資源を重点的に活用する医療機関の区分にも用いられる可能性である。
 外来機能の明確化は、「全世代型社会保障検討会議中間報告」(2019年12月19日)でも重要なキーワードである。「大病院は充実した人員配置や施設設備を必要とする入院医療や重装施設を活用した専門外来に集中し、外来診療は紹介患者を基本とする。一般的な外来受診はかかりつけ医機能を発揮する医療機関が担う方向を目指す」ⅰ。これが国の構想する外来機能分化の基本と考えられる。

医療資源の重点的活用外来に3類型構想

 3月18日、新型コロナウイルス感染症の感染拡大で日本中が脅威に晒される中、厚労省は第20回目の検討会を開催した。そこでは外来機能の明確化について、「特に、医療資源を重点的に活用する外来については、医療機関ごとにその機能を明確化」。かかりつけ医機能については「質・量の両面の向上を図る」検討方向を示した。
 その上で、医療資源を重点的に活用する外来について、「仮に設定」した「類型」が示された。類型は三つに分けられる(表)。
 「仮」とはいえ、厚労省の意向が濃厚に表されたものとみるべきだろう。さらに検討会では実際にレセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)(平成29年度)を用いた分析を「仮」に行った結果が示されている(図1はその一例)。
 注意せねばならないのは、それが病院の外来だけを対象とした政策ではない点である。無床・有床の診療所も分析の対象となっているのである。
 そのことは何を示すのだろうか。

外来医療計画で外来機能分化と外来数をコントロールする狙いか

 検討会資料には「2040年の医療提供体制を見据えた三つの改革」が示されている(図2ⅱ)。いわゆる「地域医療構想」「働き方改革」「医師偏在対策」の三位一体の改革と呼ばれるものだが、外来医療の機能分化方針もこの枠組みの中で考えられていることがわかる。「医療資源の最適配置」、「地域および診療科の医師偏在対策」と「総合診療専門医の確保等のプライマリ・ケアへの対応」といった文言を組み合わせていけば、国の目指す方向はおぼろであれ、見えてくるのではないか。
 2月28日の検討会資料では「地域における外来医療の不足・偏在等への対応」として、2018年の医療法改正で医師確保計画と併せて「外来医療計画」を医療計画の記載事項に追加。外来医師偏在指標によりランキングした上位33.3%の二次医療圏を外来医師多数区域とし、同区域での開業に事実上の開業規制を設けたことを解説。ただし、その仕組みの不十分さを次のように指摘する。「外来医療計画は、無床診療所の都市集中等の対応のため、地域の外来医師の相対的な不足・偏在を可視化・解消しようとする、医師偏在解消の観点からの試みの第一歩である」「このため、外来医師偏在指標は、地域の外来医療ニーズなどを踏まえた診療所医師のマンパワーの量を単一の機能と捉えて設定されており、医療機関が地域で担っている具体的な外来機能が十分に反映・明確化されているものではない」。
 ここから推測されるのは、厚労省が地域医療構想による病床機能分化、病床数コントロールを行っているのと同様、外来医療計画を使い、病院・診療所の外来機能分化と外来数(診療所においては医療機関数)のコントロールを狙っているということである。

外来医療見直しは開業医医療の見直しに

 であれば少なくとも二つの手法が予測可能である。
 一つめは、外来医療計画の枠組を使い、「医療資源を重点的に活用する外来」と「かかりつけ医機能の外来」の偏在指標を作成し、各々の「多数区域」を設定することである。
 二つめは、先に示した医療資源を重点的に活用する外来の類型をさらに専門科別に細分化し、専門科単位で「必要外来医療機関数」のようなものを設定。新専門医制度における専門科別シーリング等の既存の仕組を用いてコントロールすることである。そうなれば、「かかりつけ医機能」に該当する専門科が総合診療専門医だとの議論になるのは必至であり、協会が早い段階から指摘しているように、従来型の自由開業制・出来高払いで地域の医療を保障してきた開業医と総合診療専門医の置き換えが進むことになりはしないだろうか。
 以上のように、外来医療の見直し議論は、開業医医療の見直しにつながるものになる危険性が高い。今後も注視し、現場医師の立場からの批判的意見をあげていく必要がある。
 だが今日、すべての医療者は新型コロナウイルス感染症との闘いの最中にある。開業医は防御もなく感染症との対峙を求められている実情であり、そうした現場の奮闘を無視し、いまだ「コロナ以前」からの政策を推し進めようとしている国のあり方自体が許されるものではない。

ⅰ 第18回医療計画の見直しに関する検討会 資料1 3頁
ⅱ 同上 資料2 12~13頁


類型① 医療資源を重点的に活用する入院の前後の外来
・Kコード(手術)を算定
・Jコード(処置)のうちDPC入院で出来高算定できるものを算定
・Lコード(麻酔)を算定
・DPC算定病床の入院料区分
・短期滞在手術等基本料2、3を算定
類型② 高額等の医療機器・設備を必要とする外来
・外来化学療法加算を算定
・外来放射線治療加算を算定
・短期滞在手術等基本料1を算定
・Dコード(検査)、Eコード(画像診断)、Jコード(処置)のうち地域包括診療料において包括範囲外とされているもの
・Kコード(手術)を算定
・Nコード(病理)を算定
類型③ 特定の領域に特化した知見を有する医師・医療人材を必要とする外来
・ウイルス疾患指導料を算定
・難病外来指導管理料を算定
・診療情報提供料Ⅰを算定した30日以内に別の医療機関を受診した場合、当該「別の医療機関」の外来

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