新型コロナで京都市が臨時対応 介護認定審査会の開催方法を変更 「合議」 成立するシステム運用求める  PDF

開催方法変更には理解示す

 京都市は3月19日、介護認定審査委員宛に「新型コロナウイルス感染症に係る要介護認定の臨時的な取り扱いについて」を送付した。これは厚生労働省老健局老人保健課事務連絡(2020年2月18日、28日)が発出されたことを受け、感染拡大防止のため「臨時的・限定的」に認定審査会の開催方法を変更するものである。市に送付した文書の要点は次のとおりである。
 ①合議体(認定審査会)開催3営業日前までに委員が事務局(介護認定給付事務センター:パーソルテンプスタッフ社が受託)に市の示した書式である「ファクス意見提出票」を用いて意見を提出し、その場合提出した委員は合議体に参加したものとみなし、報酬も支払う。
 ②合議体長またはその職務代行者を含めた1人以上の委員が、事務局と直接協議する。事務局はファクスで寄せられた意見を集約した「とりまとめ結果」を報告し、合議体としての審査判定を行う。
 ③議事はファクス意見票を提出した委員も含めた過半数で決定する。可否同数の場合は合議体長または職務代行者の意見で決定する。
 これを受け協会は3月31日、「認定審査会の『合議』が成立するよう再検討を求める」要請書を市に提出し、京都社会保障推進協議会介護部会のメンバーとともに懇談した。市当局からは遠藤洋一介護ケア推進課資格認定給付担当課長が出席した。
 協会の要請書は、感染拡大防止の必要性に鑑み、特定の会場に委員が集まらない形で認定審査を行う方向性は止むを得ないものと理解を示した上で、今回の市の措置に関する問題点を指摘した。

あくまで合議の成立を

 第一に、国の事務連絡(2月28日)は、「ITC等の活用によって合議できる環境が整えられれば、必ずしも特定の会場に集まって実施する必要はない」こと、そして「機器の整備等がない場合、例えばあらかじめ書面で各委員から意見を取り寄せ」ることは認めているが、書面を取り寄せた上で「電話を介して合議を行い、判定を行うような取り扱いとしてもよい」としている。このことからもわかるように、求められているのは合議の成立である。だが、市当局の示した方法では合議が成立しない。通常、審査会の現場では事務局より修正点の申し出がなされ、それを受けての合議によって基準時間や要介護度自体が変更となる場合もある。ファクスのみの対応ではこうした対応が不可能である。合議を成立させるためには、4月以降は介護認定給付センターのスタッフが最低限の業務として、ファクスを送ってこられた委員も含め、全員の意見調整を行うことが必要である。
 第二に、要介護認定は重要な行政処分であり、集まることができないのなら、その代わりの対策は、考えられる最高の水準で行えるよう、知恵と財政の投入が必要である。すなわち、ICT等の活用によって合議できる体制の構築を急ぐべきである。

京都市「意見調整も想定。合議に向け努力」

 これに対し、市側は概略を次のようにコメントした。介護保険制度における要介護認定において、2次判定は重要である。1次判定(全国一律の判定ソフトを用いたコンピューター判定)はあくまで平均化された物差しであり、2次判定において具体的な「介護の手間」が反映されなくてはならず、その過程は決して事務的にさばいておけば良いという性格のものではない。だが、コロナウイルス感染拡大を受け、京都府医師会とも協議したところ、診療現場の強い危機感を理解し、(認定審査会開催の在り方についても)検討すべきとの判断に至った。京都市にICT会議が可能な環境があればスムーズだが、それができないのが現実。そこで今すぐにできる対応策として今回のファクスを使う取扱いを決めた。これがベストだとは考えていない。他の方策についても検討中である。
 その上で、市当局は次のようにコメントした。ファクス集約の結果、委員の意見にばらつきがあれば、事務局が電話を使い、もう一度すべての委員に連絡を入れ、意見調整することは想定している。形骸化しないようにせねばならないと考えている。
 コメントを受け協会からは、少なくとも市が委員に送付した書面からはそうした調整も行い、形骸化しないよう努力することが読み取れない。事務局が必要に応じて電話による調整を行うことを明記し、再度書面で通知してほしいと求めた。
 その上で、次の3点を市のスタンスとして確認した。①2次判定は重要なものである、②審査会が形骸化しないようにする必要がある、③臨時的な取扱いにあっても、合議が成立するように努力する。
 新型コロナウイルス感染症の拡大防止に向け、自治体・医療関係者が協力し、人々の健康・生命を守る取組みが求められている。一方、医療はもちろん、福祉ニーズに応えることも待ったなしである。拡大防止に向け最大限の努力を払いつつも、必要な人に必要なサービスを届けることができるよう、可能な限り平時に近い形でのシステム運用が求められる。

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