提言 京都府内における医療提供体制の確保について  PDF

 1、COVID-19に対応する医療提供体制確立の目的は、「死亡者を減らすこと」、同時に人々の不安感を軽減することとする。
 2、診療報酬における「感染防止対策加算Ⅰ」を届け出る入院医療機関(33カ所)で構成する「COVID-19医療ネットワーク(仮称)(略称:COVID-19ネット)」を構築する(なお、事態の推移によって同加算Ⅱを算定する医療機関(66カ所)を加えることも想定する)。あわせて、感染防止対策加算Ⅰを算定する入院医療機関と、数カ所の同加算Ⅱを届け出る医療機関によるグループを立ち上げ、地域ごとのカバー体制を構築する。
 3、COVID-19ネットは以下を実現する。
 ①医師が感染を疑ったとき、患者に対する検査(PCRのみならず近く明らかにされる新たなキットによる検査法も含む)について、迅速に実施する。同時に、京都府保健環境研究所、京都市衛生環境研究所出張所を保健所単位に仮設し、検査実施可能数を拡大する。
 ②感染が確認された患者について、重症者のトリアージならびにハイリスク患者の判定を行う。
 ③重症者は原則、各地域の感染防止対策加算Ⅰ算定病院が受入れることとし、必要に応じてCOVID-19ネット全体で対応する。想定される病床は、主に感染症病床もしくは集中治療病床とする。
 ④ハイリスク患者については、各々の疾患特性に応じてCOVID-19ネットが協議し、入院先を決定する。
 4、重症者以外の入院は急性期病床、地域包括ケア病床など病態に応じた適切な施設で対応する。
 ①重症以外の患者については、環境感染学会GLに準拠し、一般病床における「診療の手引き」を作成した上で、一般病床における病室もしくは病棟でのコホート対応とする。
 ②不顕性者は自宅だけでなく、ホテル、民泊等への入所も可能となるよう検討する。また、①の病床が不足する場合には、軽症者についても臨時的に受け入れることも想定する。こうした際には、施設内に医師・医療スタッフが不在であるため、プライマリケア連合学会の手引きに準拠する形で、外部から医療を提供できるよう、地域内において担当する医療者の体制を確保する。
 ③上記対応によりCOVID-19ネットを構成する医療機関は重症の感染患者を受け入れるため、通常の患者の入院先を別に確保することが必要になる。その役割は感染防止対策加算届出以外の医療機関が担うこととする。さらに休止中の病床の活用、活用されていない有床診療所の病床においての対応が考えられるが、その際はマンパワーの手当てが必要となる。
 5、 対応医療機関や施設に対するバックアップ
 対応するすべての医療機関は、空床確保、診療縮小や休止など経済的な困難に直面することが予想される。国・自治体による経済的なバックアップ、そして施設基準の弾力的な運用等が必要となる。
 6、医療者の健康保護、モチベーション維持、医療提供体制維持のために
 リスクを軽減する体制構築や感染防護のための装備は必須である。これは新型インフルエンザ時の調査結果を参考に対処する。とりわけ今、医療現場で不足するN95マスクや消毒液等の確保が緊急に必要である。
 7、提供体制整備とともに急がれるワクチンや治療薬の開発
 感染拡大に備えた医療提供体制の構築とともに急がれるのがワクチンや治療薬・治療法の開発である。報道では、アメリカでワクチンの治験や治療薬の開発が始まっている。速やかに認可、保険収載などの対応を行い、供給されるよう、国に対して求める。
 8、感染症拡大防止策を進める中で起こり得る差別・人権侵害の防止
 COVID-19の感染者、感染が発生した店舗や事業所、その周辺の人々に対するいわれなき差別やいじめが起こり得る事態がある。また、社会混乱は社会的マイノリティーへの差別を引き起こしかねない。国とともに差別禁止の法制化、条例化も含め、人権擁護のための施策を強める。
以上

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