続 知っておきたい医院のための雇用管理 5 社会保険労務士 桂 好志郎  PDF

職場のパワーハラスメントは優越的な関係を背景とした言動など3要素を満たすもの

 スタッフ間でのパワハラを防止するにはどうしたらよいでしょうか。リーダー格のパート職員が新人を厳しく指導して新人がすぐに辞めてしまいます。リーダー格のパート職員に任せているので一人ひとりのパート職員の細かなことまで把握できていません。受付など、院長の目の届かないところも多いと思います。

 ◆優越的な関係を背景とした言動
 職場におけるパワハラは、事業主が業務を遂行するにあたって、当該言動を受ける労働者が当該言動の行為者とされる者に対して抵抗または拒絶することができない蓋然性が高い関係を背景として行われるものを指すとされ、例えば次の①~③などが含まれると示されています。
 ①職務上の地位が上位の者による言動
 ②同僚または部下による言動で、当該言動を行う者が業務上必要な知識や豊富な経験を有しており、当該者の協力を得なければ業務の円滑な遂行を行うことが困難であるもの
 ③同僚または部下からの集団による行為で、これに抵抗または拒絶することが困難であるもの
 ◆職場におけるパワハラに該当すると考えられる例
 ①人格を否定するような言動を行う
 ②業務の遂行に関する必要以上に長時間にわたる厳しい叱責を繰り返し行う
 ③他の労働者の面前における大声での威圧的な叱責を繰り返し行う
 ④新卒採用者に対し、必要な教育を行わないまま到底対応できないレベルの業績目標を課し、達成できなかったことに対し厳しく叱責する
 ⑤労働者に業務とは関係のない私的な雑用の処理を強制的に行わせる
 ⑥労働者の病歴、不妊治療などの機微な個人情報について、当該労働者の了解を得ずに他の労働者に暴露する など
 個別の事案の状況などによって判断が異なる場合もあり得ること、例は限定列挙ではないことに十分留意してください(例は優越的な関係を背景として行われたものであることが前提です)

学習塾側に賠償命令
大阪地裁、510万円
 長時間労働やパワハラでうつ状態になったとして、個別学習塾に勤めていた男性(52)が損害賠償を求めた訴訟の判決が1月20日、大阪地裁であり、裁判長は塾運営会社に約510万円の賠償を命じました。
 判決は、毎日の業務報告で同社側が時間外労働が長時間に及んでいたと把握していたのに、防止措置を講じなかったと指摘。さらに精神疾患の診断書提出後、上司らから保護者対応などをめぐり1時間ほど叱責されたことについて「同じような内容を繰り返し述べていて、業務指導の範囲内とは評価しがたく、心身の状態に対する配慮は全く認められない」と判断しました。

 ◆院長の方針等の明確化およびその周知・啓発
 職場におけるパワハラの内容および職場におけるパワハラを行ってはならない旨の方針を明確化し、管理監督者を含む職員に周知・啓発すること。また、職場におけるパワハラに係る言動を行った者については、厳正に対処する旨の方針および対処の内容を就業規則その他の職場における服務規律などを定めた文書に規定し、管理監督者を含む職員に周知・啓発することが必要です。そして、職場におけるパワハラの発生の原因や背景には、職員同士のコミュニケーションの希薄化などの職場環境の問題もあると考えられるため、これらを幅広く解消していくことが職場におけるパワハラの防止の効果を高める上で重要であることに留意する必要があります。
 ◆相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するための相談窓口をあらかじめ定め周知する
 職場におけるパワハラが現実に生じている場合だけでなく、その発生のおそれがある場合や、職場におけるパワハラに該当するか否か微妙な場合であっても、広く相談に対応し、適切な対応を行うようにしてください。
 『友情』という本に、「人を叱る時の4つの心得」が記されています。
 ①プレーは叱っても人格は責めない
 ②後で必ずフォローする
 ③他人と比較しない
 ④長時間叱らない
 とありました。
 人を育てようとすれば、ハラスメントは起きようがありません。良きリーダーシップが求められます。

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