憲法を考えるために 64  PDF

ウイルスと緊急事態宣言

 (憲法11条)国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない…。
 (憲法13条)…生命、自由および幸福追求に対する国民の権利については公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
 (緊急事態宣言)①「生活の維持に必要な場合を除きみだりに当該者の居宅又はこれに相当する場所から外出しないこと」を期間と区域を決めて住民に要請できる。②学校、社会福祉施設、興行場(映画、演劇、音楽、スポーツ、演芸などの施設)の管理者に対し、施設の使用制限もしくは停止を要請できる。また、イベントの主催者にイベント開催の制限もしくは停止を要請できる。③臨時の医療施設を開設するため、土地、家屋または物資を使用する必要があると認めるときは、当該土地等の所有者および占有者の同意を得て、当該土地等を使用することができる。④緊急事態措置の実施に必要な物資(医薬品、食品その他の政令で定める物資に限る)であって生産、集荷、販売、配給、保管または輸送を業とする者が取り扱うものについて、その所有者に対し特定物資の売渡しを要請することができる。正当な理由がないのに要請に応じないときは、特定物資を収用することができる。
 パンデミックの恐れのあるウイルス感染防護は、科学的知見に基づいて、適切な措置を、適正な手順を尽くして、有効に行うべきであるのはいうまでもない。しかしまた、市民の安全のためといえども、市民の人権、自由を制限するのは、市民が正しい判断を下せる十分な情報公開のもとで、誠実に、謙虚に、民主主義に則って、慎重の上にも慎重に行わなければならないのも言うまでもない。それゆえ「非常事態宣言」の権限を首相に与える「新型インフルエンザ等対策特措法」とコロナウイルス流行に基づくその改定に危惧の念を持たざるを得ない。
 まず何よりも「非常事態宣言」を含むこの特措法では人権制約の歯止めが曖昧で、憲法が保障する市民の人権、自由を脅かしかねない。また新興・再興感染症拡大等を理由にした随時の発令は、政府による過剰・恣意的な運用の恐れが否定できない。さらに、法律に基づかない小中高校に対する一律臨時休校要請、また最近の「桜を見る会」、検事長の定年延長、沖縄辺野古米軍基地軟弱地盤調査結果隠蔽など、憲法・法律・民主主義軽視の恐れが否定できず、そこに「非常事態宣言」をゆだねる危惧もある。我々の憲法への姿勢が問われている。
(政策部会・飯田哲夫)

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