主張 新型コロナ感染症の広がりに医療機関の連携で備えよう  PDF

 世界保健機関(WHO)が3月12日、新型コロナウイルス感染についてパンデミックを宣言した。市中感染に備える必要がある。
 医師法では「医療と保健指導を司ることによって、公衆衛生の向上と増進に寄与し、国民の健康的な生活を確保する」ことを医師の任務と定める。わが国の国民皆保険の下では保険医は保険診療によってこれに寄与することが求められる。
 これまでは指定感染症として感染拡大防止に努めるとともに感染症病床を有する医療機関などによる医療提供を行ってきた。今後の市中感染に備えた医療体制の整備が火急の課題であり、厚労省は「国内で患者数が大幅に増えたときに備えた医療提供体制の確保」(3月6日)を行うよう都道府県に求めている。一般の保険医療機関ならびに保険医の役割が重要になる。PCR検査の保険適応はそれを含意する。
 ところが医療関係者の努力にもかかわらず感染によって診療縮小を余儀なくされる事態が起きている。第二種感染症指定医療機関である市立福知山市民病院では救急、外来を休止せざるを得なかった。医師やスタッフへの感染は医療機関のクラスター化さえ危惧させるからだ。感冒、インフルエンザなど呼吸器感染症が多い時期でもある。高齢、透析、化学療法、難病などハイリスクの患者への対応も必要だ。在宅医療の場面でどう対処するかも悩ましい。こうした中での診療縮小は医療提供体制に著しい困難をもたらすことになる。
 市中感染に備えて第一線の医療提供体制を整備することが重要である。すべての医療機関が役割を発揮できる対策が求められる。クリニックや在宅での診療ガイドラインの整備、マスクや消毒薬などの診療材料の確保、医師をはじめとする職員の安全措置、医療経営支援などの具体化が急務である。デイサービスなど地域包括ケアへの対応も不可欠だ。国の政策待ちになることなく、緊急に協議を行って感染症対策を地域医療計画に追加し、すべての医療機関が検査や治療など果たすべき機能を明示することが必要ではないか。今後の外来を含めた地域医療構想の策定にも生かすことができると考える。
 協会は保険でよい医療と医業の実現を目指してきた。オール保険医の体制構築を目指したい。

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