地域医療をきく!8 国保京丹波町病院編  PDF

地域に必要な機能と国の基準に大きな乖離

 国は公立・公的病院の再編統合を求めるデータ公表について、批判があったにもかかわらず1月17日に正式な通知を出した。京都府内の公立・公的病院が果たしている地域での役割の重要性を再確認するべく、今回は国保京丹波町病院の垣田秀治病院長に話を伺った。

 ――424病院の統合を求める病院名公表についてどう思われたか。
 私は事前に何も知らされておらず、新聞報道で初めて知った。京都府もコメントされていたが、まずは唐突であったということ。もう一つは判断基準が過去のデータであり全国画一のものなので、地域の実情に即していない面が多分にあるということ。
 ――「診療実績」の基準は手術件数など国が考える急性期医療の姿を表しており、病院が地域で果たしている役割とは乖離があると感じている。病院が果たしている役割をお聞きしたい。
 京丹波町は人口1万4千人弱の町で、常勤の開業医がおらず、唯一の一般病床を持つ病院として、病院機能とかかりつけ医機能を持たなければならないことが、他の府内3病院と違うところ。かかりつけ医機能を担うためには一般診療も含めて、在宅診療、学校医、検診などあらゆることをしなければならない。肺炎などの急性疾患もみないといけないが、高度医療をしているわけではない。それをもって基準を満たしていないと言われるのはいかがなものかという気がする。
 もう一つの基準「類似かつ近接」で、高速道路も含めて車で20分以内とされたことで、京都中部総合医療センターと近接だとされることは疑問に思う。あくまで病院と病院の間が20分であって、患者さんの御自宅からだとプラスアルファを考えないといけないし、近年特に多い災害時には当地域は孤立してしまう危険性が非常に高い。
 ――国の政策は、病床の機能分化だけではなくて新専門医制度でも統制をかけてきている。医師数の不足についてどう考えておられるか。
 このような地域では総合診療専門医が必要とされる。しかし総合診療専門医自体がまだ十分認知されていないために、内科や総合内科に流れる方が多い。当院にも、内科専攻医が3月ごとの地域医療研修で来てくれているが、彼らも期間が過ぎれば大病院に帰ってスペシャリストとしての道を歩んでいく。専門医制度をつくったことで将来的にますます総合診療専門医が養成されにくくなるのではないかという危惧がある。総合診療専門医を目指す専攻医は全国でも年間200人前後、京都府でも数人程度の状況なので、もっと増えてもらわないといけない。
 ――広い地域に唯一の病院として頼りにされていると思うが、患者さんからの心配の声などあったのではないか。
 報道当初は、患者さんから心配する声を聞いたが、何も変わりませんよと言っているので、最近は聞くこともなくなった。職員はあまり感じていないように思う。なぜなら職員自身もこの病院の必要性を強く認識しているからだと思う。
 患者さんの状況としては、町は高齢者が40%を超えているので、実際に仕事をされていない方が多いかもしれないが、産業構造的に見れば一次産業の方が多いだろう。公共交通機関はバスがあるものの便数が少ないので、自家用車での家族による送り迎えが多い。介護サービスを利用して社協の送迎サービス利用されている方もいるというのが現状だ。
 ――協会は医師偏在や病床偏在の解決には、短期的には総合診療専門医の配置も含めて地域にふさわしい医師の姿を作っていくことだと考えるが、究極的には地域で医療をやることによって医師の生活が成り立つだけの地域経済の改善が必要だと思っている。どう考えておられるか。
 地域経済にとっては病院も一つの事業体であり、100人以上の事業体は町の中でも大きな存在だ。それをダウンサイジングするということは、町の経済を下げることにもなる。現状を維持する体制を整えていくことが町の経済維持にもつながると考える。
 町としては、病院が今後どうしていくかは京丹波町だけで考えることではなく、南丹医療圏および京都府の地域医療構想の中で考えていくという立場。現状維持をしていきたいという希望は持っているが、皆の中で調整して決めていくことになる。経営努力をしていきながら、47床ができるだけ埋まるよう、そして行政に負担をかけないよう何とかやりくりをしていきたい。
 ――最後におっしゃりたいこと。
 医師を確保すること、医師を増やすことは大事だが、それぞれの地域に必要とされる医師が育っていかないと地域医療は維持できないと実感している。数だけの調整ではだめだというのが今の私の思い。

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