決議  PDF

 昨年11月下旬に通算在職日数の最長記録を更新した安倍首相は、憲法改正やデフレ脱却に取り組む意欲を示した。アベノミクスによる大規模な金融緩和と財政出動を実施した結果、日経平均株価の上昇と共に全体的な経済指標は上向きと言われる。しかし、企業の内部留保が増えただけで賃金は低迷し続け、大多数の国民は景気回復の実感が得られていない。
 子育て、医療・介護、年金等の社会保障の充実のためとして、消費税増税が施行された。同時に開始した幼児教育・保育の無償化制度だが、すでに財源が不足する見通しであり、さらには保育の質確保や待機児童解消が置きざりにされるなど甘い制度設計が露呈し、実態に則した制度となるよう求める。
 地域医療構想、医師偏在対策、医師・医療従事者の働き方改革の三位一体の施策が、今後の医療提供体制に大きな規制や変革をもたらそうとしている。病院・診療所機能の転換を迫る“科学的根拠”として医師多数区域・少数区域を機械的に計算して設定し、自治体に提示している。多数区域では、医師の配置制限や開業制限が危惧される。厚労省による再編・統合を求める424の公的・公立病院名の公表は、単に地域住民を不安に陥れるだけで、単なる試算の数字が、地域の実態を全く反映していないことや、それぞれの地域で病院や診療所が役割を持ち、連携し地域医療が成り立っていることを全く把握していない。
 医師の働き方改革において勤務医の長時間労働規制のためには、交代制勤務などの改革が実現できるような診療報酬の引き上げが必要である。一方で勤務医の労働条件改善を進めると地域の開業医が業務過多になる可能性もあり、社会保障費抑制策の抜本的転換が必要だと考える。
 日本は唯一の戦争被爆国として、核兵器のない世界の実現に向け、国際社会を主導する役割を世界から期待されている。しかし、核兵器禁止条約への署名に関して、政府は核保有国と非保有国との橋渡しに障害をもたらすとして議論すら喚起していない。そればかりか、憲法9条への自衛隊明記を含む改憲に意欲を示し、日本を戦争のできる国にしようとしている。
 私たち保険医は、人命を守る専門職として平和を希求すると共に憲法25条で規定された社会保障の理念の基本に立ち返り、よりよい医療・社会保障制度の実現を目指し、以下決議する。
一、医師と医療従事者の労働が、正当に評価されるような診療報酬改定にすること
一、国民皆保険制度を堅持し、必要な医療を必要なだけ保険給付すること
一、国民の健康を支える地域の実態を把握していない医師偏在対策・地域医療構想に基づいた医療費抑制政策を転換すること
一、医師の働き方改革は、医師の生命・健康と、地域医療を守ることを両立できる方法で進めること
一、原発・化石燃料から再生可能エネルギー中心へ転換すること
一、平和的生存権を否定する改憲をやめること
2020年1月23日
京都府保険医協会
第198回定時代議員会

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