京都市の介護業務集約委託は問題 社保協等の説明会に市民の声噴出  PDF

 京都市が4月から実施しようとしている介護保険認定給付業務の集約委託について、その問題を指摘する立場からの説明会が京都社会保障推進協議会・京都市職員労働組合の主催で1月22日に開催された。昼夜2回の開催で介護保険事業所、介護認定審査会の審査委員の医師など230人を超える参加があった。

 説明会では、主催者側からこの間の経過等が説明され、業務見直しの内容と問題点を報告した。
 集約・委託に伴う問題として、①介護保険法でも自治体の責任が明記されている。また、要介護認定というシステムの本質的問題から、認定業務は公務で行う必要性がある②嘱託員がほとんどいなくなることで、これまで専門性を持ち、業務に関して介護関係者とともに積み上げてきたものが崩される③他都市の例でも明らかなように、集約委託により、大幅業務遅延が発生し、介護が必要な市民や介護事業所に、大きな不利益を与えることになりかねない④区役所の体制が大幅に縮小され、また業務に精通している嘱託員がほとんどいなくなり、そのうえ業務を区役所で完結しない(受付書類を「センター」に送付したあとは関与できない)ため、区役所での相談等をこれまでのようには行えなくなる⑤緊急時の対応については、現時点では検討中とされているが、どこまで個別対応ができるのか非常に疑問⑥給付業務について、他の政令都市で集約・委託を実施しているところはなく、認定給付業務を一括して委託することで、他都市以上の混乱が予想される⑦膨大な個人情報を一企業が扱うことになる問題―の7点を指摘。
 さらに進め方等に関する問題として、①市民や介護事業者に知らせないまま業務の見直しを決定し、進めていること自体が問題②申し入れにも回答せず、実施まであと2カ月という現時点でも、詳細が明らかにされていない③委託の公募に対して「テンプスタッフ」が京都市に提出した企画提案書の内容について、京都市は公表を拒否しており、委託先決定の根拠や経過が非常に不透明。また、京都市が責任を持つべき業務であるにもかかわらず、委託先の実施体制等が明らかにされないこと自体が問題であるとした。

認定審査委員からも意見

 フロアから発言した介護認定審査委員の水谷正太医師は、制度変更が審査委員に知らされていなかったことを問題視するとともに、審査に支障が生じるおそれがあると不安を述べた。また、地域ごとに医師が意見書を作成しそれを地域の審査委員が審査する地域性を重視した京都らしいシステムを変えないでほしいと訴えた。さらに、医療・介護は集約化や効率化に馴染まない分野であり、人の気持ちに応えられるのかと疑問を呈した。
 その他にも、「議員が資料請求しても内容のわかる資料が出てこないのは国の縮図だ」「市が責任を持てなくなるのではないか」「丁寧な聞き取りをしていた職員が雇い止めになる」「地域で努力してきたローカルルールも消えることになる」「地域の状況に応じた説明をテンプスタッフの要員が理解してもらえるのか疑問」などの意見が相次いだ。
 これらを受けて閉会あいさつを行った京都社保協の渡邉議長は、市民サービスを自治体に代わって行う委託の内容を示さない市の姿勢が市民の不安につながっているとし、今説明会であがった問題点や意見を京都市に提示して方針の転換を求めていきたいとした。

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