憲法を考えるために63 改正手続と国民投票  PDF

 憲法96条をもとにした憲法改正手続きは、①国会発議:(通常とは異なり)衆議院100人、参議院50人の賛同によって改正原案を国会に提出。両院の憲法審査会にて改正原案を審査。両院ごとに過半数の賛成で可決後、本会議に提出。両院の本会議にてそれぞれ3分の2以上の賛成で可決(衆議院優越は適用されない)。両院可決を以って国会による憲法改正発議(改正案が複数条項ある場合には、関連項目ごとに提出、審査、可決)。②国民投票:国会発議後60日以上180日以内に実施。投票権は18歳以上の日本国民(在外邦人を含む)。投票は賛成・反対の2択。投票総数(無効票を除く有効票数)の過半数の賛成で成立。③公布:天皇によって公布。国民投票の結果告示から30日以内に無効訴訟を起こすことができる。
 以前にも触れたが、憲法改正国民投票法の問題点は①最低投票率の定めがなく、投票権者のうちの少数の賛成のみで改正される恐れがある。例えば投票率40%の場合には投票権者の20%超程度の賛成で足りることになり、このように投票権者の3分の1にも満たない少数の賛成で憲法改正が承認されるのは、改正憲法の正当性・信頼性が損なわれる。②国民投票運動のための有料広告放送が投票期日の15日前までは自由であるため、資金力の差により、放送時間帯や放送回数・期間、広告の質に圧倒的な差が生じ得、資金力のある者による有料広告放送により国民の判断が影響される恐れがある。③公務員・教員の地位利用による国民投票運動の禁止については、「国民投票運動を効果的に行いうる影響力又は便宜を利用して」というきわめて曖昧な規定であり、禁止される行為と許容される行為の区別が明確ではなく、表現の自由等に対する萎縮効果が生じ得る。④最短投票期間が発議後最短で60日という期間は憲法改正の重要性からして短すぎる。
 このような憲法改正国民投票法の下での憲法改正は、主権者である国民の意思を適切に反映できない恐れがあり、そしてそれによってもたらされる政権の主張する憲法改正案は平和と人権に大いなる問題をもたらすのではないだろうか。
(政策部会・飯田 哲夫)

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