医界寸評  PDF

 “身の丈発言”に端を発した一連の騒動により、大学入試の英語の民間試験活用実施が延期に追い込まれた。数学、国語の記述式問題導入もいまだ問題山積であり、実施されるかどうかという状況である。受験生の不安は計り知れないものであろう。こういう見切り発車的な国の施策はあらゆる分野で見られ、医療分野も例外ではない▼15年10月に鳴り物入りで導入された医療事故調査制度だが、医療事故報告は19年10月現在で累計1535件、月々20~30件と年間1300~2千件の当初の予想より遥かに下回っている。制度の目的は原因究明(=責任追及)ではなく、医療安全の確保・再発防止とされ、紛争処理の制度ではないが、目標達成には遠く及ばない▼当初から懸念されていたが、どの症例を届け出るのか。医療事故調査のための病理解剖やAIの制度、体制を十分に整えず、現場の状況を十分に精査、検討しないまま制度を発足させたためだ。医療事故報告の判断、センター調査などに関する相談件数は累計7923件に上り、事故を院内で検討する機会が増えた点は一定評価できよう。今後の調査結果の分析、評価に期待したい▼先の文科大臣の“身の丈発言”がなかったら、不完全な入試制度が始まっていただろう。ある意味、今回の最大の功労者と言えるかもしれない。(フーちゃん)

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