医界寸評  PDF

 最近、名古屋大学教授・福和伸夫氏の講演を聴く機会があった。近い将来、必ず来るといわれている南海トラフ地震の講演だったが、人的・経済的被害は甚大で、無策で被災すると世界の最貧国になってしまう可能性があるなど怖い内容でいっぱいだった▼講演のテーマは「見たくないことも直視して災い転じて福となす」だったが、現代社会が直面している危険に警鐘を鳴らす人がいるのに、それをマスコミはきちんと伝えず、取り上げるときは茶化したり恐怖をあおるだけのバラエティー番組の手法で作られているような気がする。バラエティー番組しか見なくなった我々国民も反省するべきかもしれない▼台風15号による広範囲の停電の原因となった、送電線の鉄柱の倒壊でも、強度は十分だったのかという当然の疑問に対する報道が、なされていないように思う▼講演の中では地震時のエレベータ閉じ込め問題に触れていた。18年の大阪北部地震では地震の規模の大きさの割に、多くのエレベータで閉じ込めが起きたという。これはエレベータの安全装置がきちんと働いたからで、故障ではなく、安全装置が過敏すぎるそうだ。軽微事故でも怒られないよう過敏にしているため、全体としては被害が大きくなる。現在の医療の現場でも似たようなことがあるかもしれないと思いながら聞いた。(内)

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