厚労省 再編統合対象の公立・公的病院を名指し 地域医療支える病院の実像軽視  PDF

 厚生労働省は9月26日に開催された第24回地域医療に関するワーキンググループ(WG、座長=尾形裕也九州大学名誉教授)において、2025年の地域医療構想調整会議の実現に向けた具体的対応方針の「再検証」対象として、424病院の公立・公的病院名を公表した。

 これは、5月16日の第21回WGに示された「具体的対応方針の検証に向けた議論の整理」にある「17年度以降、個別の病院名や転換する病床数等の具体的対応方針の速やかな策定に向け」た、各都道府県における「2年間程度」での「集中的な検討」において、「公立・公的医療機関等でなければ担えない分野へ重点化された具体的対応方針であるか確認することを求め」るとの方針に沿ったものである。
 すなわち地域医療構想の実現が、病床数削減や病床機能転換という、各医療機関の経営方針、将来の存廃にかかる問題である以上、直接の影響を行使しやすい公立・公的医療機関が率先して、再編統合、ダウンサイジングを図れということに他ならない。今回名指しされた病院は、その対象者リストへ名を連ねられたことを意味する。
 京都府において「再検証要請対象医療機関」に名指しされたのは、市立福知山市民病院大江分院、舞鶴赤十字病院、国保京丹波町病院、独立行政法人国立病院機構宇多野病院である。
 選定は二つの尺度を用いてなされている。
 (A)診療実績が特に少ないこと(B)構想区域内に、一定数以上の診療実績を有する医療機関が二つ以上あり、かつ、お互いの所在地が近接していること。
 Aの診療実績は、がん、心血管疾患、脳卒中、救急、小児、周産期、災害、へき地、研修・派遣にカテゴライズし、例えばがんなら、消化器悪性腫瘍手術の件数というように、各実績と医療機関数を人口区分別にヒストグラム化し、下位33・3パーセンタイル値を「少ない」と判定する。
 Bの類似の実績は、同一構想区域(≒二次医療圏)内において、がん、心臓、脳卒中、救急、小児、周産期についての診療実績が上位50%(累積占有率50%)以内に入っている上位医療機関グループと下位グループに区別する。その上で、単独もしくは少数の医療機関が当該区域の診療実績の大部分を担っている場合を「集約型」と呼び、下位グループはすべて「類似の実績」と判定。さらに上位グループであっても下位と差がない医療機関があれば、それを「横並び型」と呼び、「類似の実績」と判定する。また、「所在地が近接していること」については、自動車での移動時間が20分以内の距離に診療実績を有する他の医療機関があれば、「近接」と判定する。
 以上のような尺度で抽出されたのが先の4病院である。
 再検証を求められた病院は、「2025年を見据えた構想区域において担うべき医療機関としての役割」と「2025年に持つべき医療機能別の病床数」の見直しが求められ、見直し例として「周産期医療を他医療機関に移管」「夜間救急受け入れの中止」「一部の病床を減少」「(高度)急性期機能からの転換」が挙げられている。
 新聞報道によると京都府医療課はすでに遺憾の意を表明したという。すべての地域の医療機関には歴史があり、その地における役割がある。
 現実に地域の中で当該の病院がどのような役割を果たしているのか現地に足を運んで見聞せず、机上のデータによる機械的判断基準で、その病院の役割に疑問を呈することは、医療機関やそこに従事する医師をはじめ医療スタッフ、患者、地域住民を不安に陥れるだけでなく、その医療機関を含む地域の医療連携を破壊することにつながる。
 厚生労働省は翌日には、「必ずしも医療機関そのものの統廃合を決めるものではありません。また、病院が将来担うべき役割や、それに必要なダウンサイジング・機能分化等の方向性を機械的に決めるものではない」とのコメントを発表したが、医療過疎地の医療確保、医師偏在対策の必要性が言われる中、問題解決に逆行する対策をとろうとしていることを自覚すべきである。

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