福祉医療制度の改善を 京都府・京都市と懇談  PDF

 協会は7月31日に京都府知事、8月7日に京都市長へ「福祉医療制度の拡充に関する要請書」を提出し、担当課と懇談して改善を訴えた。7月17日に京都府議会議長、京都市会議長宛てに同要請項目で陳情書を提出。府議会・市会の各会派に改善の協力を訴えている。

京都府
新制度創設は困難
子ども医療費は協議継続

 7月31日の京都府への要請には鈴木理事長、植田理事が参加。京都府は健康福祉部医療保険政策課・安原課長、同課・森川医療保険広域化担当課長、松本主事の3人が対応した。
 京都府への要請項目は、①妊婦、産婦、褥婦に対する福祉医療制度を新設すること②重度心身障害児(者)医療助成制度(43)、重度心身障害老人健康管理事業の対象について「内部機能の障害」は身体障害者手帳3級の交付を受けた患者まで拡大すること③子育て支援医療助成制度(45)の入院外医療における自己負担金は中学校卒業まで無料または200円限度にすること④17年12月末まで難病法に係る特定医療費助成制度「法別番号54」の旧実施機関番号「501」に該当していたが18年1月から制度対象外となった患者について、「法別番号54」と同様の一部負担金で受診できるよう福祉医療制度を新設すること⑤公費負担医療制度の申請に必要な医師の意見書、臨床調査票等の作成費用について、医科診療報酬点数表B009診療情報提供料(Ⅰ)並みの金額(2500円)まで助成(患者へ還付)すること―の5項目。
 これに対して府は「府および自治体の予算が厳しい中、19年度の福祉医療の予算として71億6千万円を確保し、制度の維持に努めている。子ども医療費助成、重度心身障害児者に対する医療費については、ナショナルミニマムとして一律に制度化すべきだと、国に対して一貫して要望している。福祉医療費制度を実施している自治体への国民健康保険に対する国庫負担のペナルティーについても、全国知事会、全国市長等と連携しながら、ペナルティー全廃を国に要望している。要望①について、国の動向を注視している状況で、制度の新設は困難。全国で4県(青森・国保、岩手、栃木、茨木)が実施しているが、広がりを見せていない状況。②について、自己負担無料の対象を拡充していくためにはかなりの財源が必要となるため、今のところ、現行制度の維持に努めたい。③は、今年9月から3歳以上の外来受診時の負担限度額を月1500円に引き下げる。まずは拡充後の制度を安定的に維持できるように努めたい。更なる拡充については、今後府内市町村と協議を重ね検討していく。④制度の新設は困難。⑤小児慢性、難病医療費の手続きにおいて、意見書・診断書の作成費用について患者の負担軽減が図られるように国に対して要望している」と回答した。
 これに対して、鈴木理事長は京都府の取り組みを評価、財源確保について理解を示すとともに「国は全世代型社会保障を充実させるとしており、特に子どもや子育て支援に重点をおいた福祉施策を実施すると言っている。それならば、もっと国の方から全国の自治体に対して財政的な負担・支援を行うべきであり、国に対して交渉する条件が十分ある状況であり、我々も国への働きかけが重要だと考えている」と述べた。
 これに対して京都府は「全国的な問題として国保保険料の子どもの均等割の改善を働きかけていきたい。また、福祉医療を実施した際のペナルティーを廃止するよう今後とも強く申し入れしていきたい。なお、18年度から福祉医療を実施した際の未就学児童分のペナルティーが廃止され、6千万円程改善されたが、依然として11~12億円程度の国庫負担が減額されている状況だ」と回答した。
 鈴木理事長は「自治体が頑張れば頑張る程、国の国保料負担が減らされるのは問題」と批判した。京都府は「今年度予算は15%カットを目標に掲げる中、福祉医療制度を維持するとともに、子ども医療費については拡充した。現行制度を守るために頑張りたい」と述べた。

京都市
市会検討後、回答したい

 8月7日、京都市への要請にも同役員が参加。京都市は子ども若者はぐくみ局子ども若者未来部子ども家庭支援課・寺山課長、同課・西村母子保健係長の2人が対応した。
 京都市への要請項目は、①京都府内他市町村では実施されているにもかかわらず、京都市では2004年度から廃止されている妊娠中毒症等療養援護の制度を、早急に復活すること②「京都府への要請書」に記載した五つの要請項目について、府制度として実現できるよう、京都府に働きかけること―の2項目。
 市は「市会に請願書が提出されており、要望の趣旨は理解している。10月の市会教育福祉委員会で検討した後、正式に回答したい。なお、京都市では2011年から初産、高齢の妊婦、障害のある妊婦に対して保健師等による訪問指導を実施しており、妊娠中毒症の妊婦の受診につなげている。ただし、入院医療が必要な方は少ない」と回答した。協会からは「それならばなおさら療養援護を復活させてほしい。妊婦の健康を守ることは税収増にもつながることだ」と改めて要請した。
 協会は、府・市の福祉医療制度は全国的に見ても充実していると考えているが、更なる拡充は今後とも求めていきたい。国に対しても、妊婦、子ども、障害者・難病患者の負担軽減、小児慢性・難病医療の意見書・診断書の作成費用の公的評価を粘り強く求めていきたい。

ページの先頭へ