社保研レポート 睡眠障害診断は問診重視を  PDF

第665回社会保険研究会 睡眠障害とその治療レビュー
講師:古木内科医院 院長 古木 勝也氏

 2月19日、社会保険研究会を一般社団法人福知山医師会との共催で福知山医師会館にて開催した。今回は、ベンゾジアゼピン受容体作動薬を1年以上連続して同一成分を1日当たり同一用量で処方した場合、処方料・処方箋料が減算される取扱いから除外されるための京都府北部研修としての位置づけ。テーマは、睡眠障害とその治療レビューについてで、古木内科医院院長の古木勝也氏が講演した。出席は19人、質疑応答も活発に行われた。
 古木氏は、はじめに、不眠症は罹患頻度の高い代表的な睡眠障害の一つである。成人の30%以上が入眠困難、中途覚醒、早朝覚醒、熟眠障害などいずれかの不眠症状を有し、6~10%が不眠症に罹患している。不眠は、眠気、倦怠、集中困難、精神運動機能低下、抑うつや不安など多様な精神・身体症状を伴うことが多い。その結果、不眠症は、長期欠勤や医療費の増加、生産性の低下や労働災害事故の増加など、さまざまな人的および社会的経済損失をもたらすことが明らかとなり、公衆衛生学上の大きな課題の一つとなっていると述べた。
 続いて、睡眠には、レム睡眠とノンレム睡眠が1セット約90分で繰り返される。睡眠障害の基礎としては多種多様だが、臨床場面で高頻度に不眠症が認められる。不眠症には、主に入眠障害、中途覚醒、早朝覚醒、熟眠障害の4種類の臨床症状がある。その原因としては、身体的疾患に伴うもの、生理学的不眠、心理学的不眠、精神疾患に伴うもの、薬理学的不眠に分類される。その疫学調査結果等の報告も行われた。続いて、睡眠は食事や運動とともに生活上の重要な要素であることから、生活の乱れが関与する生活習慣病と密接な関係があり、高血圧、糖尿病、うつ病についても触れた。
 睡眠障害の診断について、問題点を明らかにするためにも問診の重要性を指摘した。不適切な睡眠習慣・寝床環境が不眠の悪化・持続因子なっている場合には睡眠薬の効果は期待できない。また身体疾患・精神疾患が何らかの睡眠障害を引き起こすことから、基礎疾患の治療薬による睡眠障害の除外と対応について述べるとともに、睡眠の質・量を維持向上するための適切な生活習慣や睡眠環境について、科学的知見にもとづく生活指導の睡眠衛生指導にも言及した。最後に、薬物療法、ベンゾジアゼピン系睡眠薬、非ベンゾジアゼピン系睡眠薬、精神生理性不眠、うつ病の不眠、アルコールによる不眠、高齢者の不眠、生活習慣病と不眠が合併した場合、睡眠薬と認知症、向精神薬長期処方の減算の解説が行われた。

講師の古木氏

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