主張 誰がための医薬分業 院内処方の再評価を  PDF

 1997(平成9)年の医療法改定を契機に推進され、70%を超えた医薬分業であるが、医療費抑制の流れの中、やや様相を異にしてきた感がある。かかりつけ医機能の充実に名を借りたフリーアクセス制限のため、地域包括診療料や同加算なるものが現れ、算定条件として院内処方が原則とされた。
 門前薬局がない立地条件から、制度の詳細を検証することなく、「院外処方は割高で、患者さんの負担が増える」程度の漠然としたイメージで院内処方を継続してきたが、とある地区懇談会で出された質問により、衝撃的事実を認識することとなる。
 「この処方内容で14日分投薬した場合、院内と院外でどのくらい差が出るのか?」という具体的な質問に対し、調剤薬局に依頼して試算してもらった結果を見て愕然とした。薬局により管理指導料等の算定要件が異なるものの、3倍を超える点数となるのである。これに高齢者では必須と思われる1包化を行えば、薬局では1包化加算が算定され、4倍以上、さらにかかりつけ薬剤師指導料を算定できる薬局ならその差は実に約5倍となる。
 薬剤師他の人件費を賄うためには必要な額なのだとの主張もあろうが、常勤薬剤師を雇用して院内処方しても、わずか8点が加わるだけであるのとあまりにも差がありすぎる。
 保険者がキャンペーンを張り、直接通知で普及を図る後発医薬品の使用促進の達成報酬ですら、院内と院外では処遇が異なる。
 高齢者がほとんどを占める自院において、終日稼働しているのは分包機である。分包紙、印字用のカラーリボンを併せた材料費だけで月4万5千円強。これに機械本体のリース料、電気料、人件費を加えればいくらになるか? この費用は全くの持ち出しなのである。
 医薬分業のメリットを否定するものではないが、院内処方をせざるを得ない、あるいは院内で充分な体制を取っている医療機関に対しての評価を希望する。まずは1包化加算を院内処方においても設定することを強く求めたい。

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