社保研レポート コンピュータ審査と医療ビッグデータ~日本の未来を示唆する韓国の現状と問題点~  PDF

第664回社会保険研究会
講師:イーコーポレーションドットジェーピー㈱ 代表取締役社長
明治大学専門職大学院兼任講師
総務省 電子政府推進員 廉 宗淳(ヨム・ジョンスン)氏

 12月22日、社会保険研究会を開催した。17人の出席者による質疑応答も活発に行われた。
 廉氏はまず、第四次産業革命の到来で、ITは単なるツールから、戦略的な武器となりうると切り出した。次に自己紹介を兼ねて情報通信アドバイザー、病院ITアドバイザー、自治体の情報政策に関与した経験を踏まえ、日本のITの普及と利用状況について解説。例えば、新幹線は自動改札口の設置にかかる価格とメンテナンス費用が運賃に含まれているが、チケット購入時点でIT管理することにより自動改札口をなくせると提言。気づかない無駄、なくすイノベーション体制が必要と述べた。
 次に、韓国と日本の医療関係の共通点としては、高齢化と少子化が進んでいること、医療政策・制度は酷似していることなどをあげた。相違点としては、韓国の医療保険制度やHIRA(健康保険審査評価院)について説明した。韓国では国家規模の医療情報化が進み、医療保険財政の黒字化を成し遂げつつある。また、病院の大型化、グローバル化、営利化、業務効率化が進んでいる。ICTを医療政策や病院経営に積極的に取り入れ、国家規模の医療ビッグデータを利活用できる環境整備、このビッグデータとAIを利活用して治療から予防医療への挑戦、医療品質管理(病院と医師の評価)、DURシステム(服薬重複・併用禁忌防止システム)の実現などさまざまな課題を克服しているとのことであった。
 一方、問題点としては徹底的な資本主義論理の導入により、医療が商業化に走り過ぎていると指摘した。
 ICTで病院を改善する方途として、ICTをフル活用し、受付や収納、事務の効率化を行う。予約時に看護師による問診等を行うことによって、院内受付窓口数を減らすことも可能になる。医療の効率化として、医師と看護師の役割分担を変更、収益事業の多様化に言及した。ICTを経営手段と位置付けることが大切だとまとめた。
 当日の模様は保険医協会ホームページにて動画配信をしている。ホームページへのアクセス方法は、左記をご参照いただきたい。

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