決議  PDF

 いわゆる「2025年問題」に対応すべく「川上から川下へ」の医療・介護提供体制改革が具体化して来た。川上の病院は「地域医療構想調整会議」で急性期病床の機能転換が迫られる。一方、川下の診療所・訪問看護ステーション・施設を中心とした在宅医療・介護の推進では「地域包括ケアシステム」構築が図られている。この検討の中で医師・看護師・介護福祉士・保育士など担い手の絶対的員数不足や仕事量の過重が問題となって来ているが、政府は“偏在”の解消やタスクシフティングその他の働き方改革、民間企業やボランティア頼み、さらには外国人労働者受け入れ拡大など、根本問題には触れない最終解決を目指している。今こそ国民間の格差是正を図り、徴税段階での応能負担の徹底等により税収を確保するとともに、国家予算の使い道を抜本的に改め、医療・介護・保育等社会保障の担い手の増員・育成・評価の重点的取り組みを進めるべきである。
 世界に目を転ずれば、トランプ米大統領の強引な自国利益優先策で、米国は各地で経済・外交・軍事に渡る国際緊張を引き起こしている。一方、これまでの新自由主義の経済グローバル化論は米国を中心とした大企業のグローバル支配に至る理論であったことが明らかとなって来た。これまで、米国の経済・外交路線を支持してきた我が国ではあるが、今後進展する日米2国間物品貿易協定交渉や、防衛装備拡充の国産化を図ってきた中での米国戦闘機の大量購入約束など、今まで以上に厳しく迫られている。日本の諸産業やサービスのさまざまな分野で、日米間の利益相反が拡大してきており、薬品や医材価格、知財を巡る今後の動向を注視する必要がある。
 京都府保険医協会は、医療の多くが政治に委ねられているとの認識に立ち、今までも民主主義・国民主権と生存権・幸福追求権を希求する憲法の精神を具体化する運動を提起してきた。また、人命を守ることを業としている医師集団として、ひとたび起これば多大な人的・経済的被害をもたらす戦争に反対し、同様の観点から原子力発電に依存しない社会を目指す方針を表明して来た。平和と安全なくして医療や社会保障の充実は成し得ない。
 私たちは今こそ憲法第25条で規定された社会保障の理念の基本に立ち返り、保険医運動の原点に依拠して、憲法第18条に保障された国民の誰一人も戦争などの苦役により生命を奪われず全ての国民が生命と健康が守られる国の在り方と、より良い医療・社会保障制度の実現を目指し、以下決議する。
 一、新自由主義改革・軍事大国化による国づくりではなく、すべての人が社会保障で安心して生きられる国を目指すこと
 一、保険で良い医療と医業の実現を阻む、給付率自動調整、審査基準統一化、新たな制限診療、地域別診療報酬、受診時定額負担、患者負担増等の導入を断固阻止すること
 一、医師の働き方改革は医師の生命と健康を守り、地域医療を守ることを両立できる方法で進めること
 一、誰もがその人らしい高齢期を生きられる公的なケア保障の実現を目指すこと
 一、原発再稼働、原発輸出等は直ちに止め、再生可能エネルギーへ転換すること
 一、平和的生存権を否定する改憲を止めること
 一、非課税還付方式など非課税を維持したまま、控除対象外消費税を根本的に補填するための制度を、消費税法の枠組みで改めて確立すること。また、診療報酬改定の際には、控除対象外消費税の補填状況を速やかに正確に公表すること
2019年1月24日
京都府保険医協会
第196回定時代議員会

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