主張 医師偏在問題に端を発した 医師・医療の統制に危機感  PDF

 今、国は医師の管理や統制策の具体化を急速に進めている。医療費の地域差縮減を目指す国は、その差異は、医師数や病床数の差が原因と単純に考えている。本来地域によって疾病構造は異なり、それぞれが抱える課題が異なって当然である。こういったことを無視し、地域の実情に全く合わない形で医療に枠をはめ込み、国が考える適正な医師数、病床数へと収れんするよう求めている。病床数は、すでに地域医療構想によって適正化の仕組みが作られた。そして次に国は、医師数を「適正数」にするため、実質的に「開業規制」につながる政策を進めている。その一つが、医師が少数であるか、多数であるかの「ものさし」、すなわち医師偏在指標である。去年9月、厚生労働省の医師・医療従事者の需給に関する検討会・医師需給分科会は医師偏在指標の現時点の考え方を示した。これは、各都道府県・二次医療圏間の受療率と医師数を「標準化」し、比較するものであり、地域の現実を反映しないものとなっている。
 さらに、去年の12月26日、第25回医師需給分科会で、「地域ごとの外来医療機能の偏在・不足等の客観的な把握が可能となる指標」(外来医療の医師偏在指標)を提案した。これは、「外来医師多数区域」で開業する際、その届出に、在宅医療、初期救急医療、公衆衛生など「地域で不足する医療機能」を担うことに合意する旨の記載欄を設け、従わない場合は行政が開催する協議の場への出席を求め、そして、協議方針に従わない医療機関等については、都道府県医療審議会に報告し、意見を聴取するなどのチェック機能を持たせるなど、より直接的に開業のハードルを設けるものである。
 これまでも、自由開業制を規制する国の動きはあった。しかし、私たち医師がそれを食い止めてきた。今まさに、国は医師数の制限だけでなく、医師のありかた・医療のありかたへの介入を強めつつある。私たちはこのことに対してしっかりと対抗していく運動が必要である。

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