丹後半島心の原風景 第4話 丹後一の絶景ポイント カマヤ海岸 辻 俊明(西陣)  PDF

 伊根町から経ヶ岬まではカマヤ海岸と呼ばれるリアス式海岸で、丹後一の絶景ポイントである。晴れた日には浅瀬は太陽の光を反射してコバルトブルーに輝き、青々とした山は真っ青な空と海に連なる。海岸を通る道は狭く、レストランや売店など一切ない。半島の最北端で鉄道の便もないから過去数十年間変わらぬ風景が保たれている。ずっとこのままでいてほしい。
 カマヤ海岸展望所では唯一車を停めることができる。ただし車が停まっているのをあまり見かけることはない。展望所の脇から、120メートルほど下の海岸に降りて行くことができる。そのルートはケモノ道で、その気になって探さなければ入り口がわからない程なので、恐らく近くの住人でも存在を知らないだろう。ここを運動靴あるいは山靴で、長袖長ズボン、軍手で雑草をかき分けながら数分進むと海に到着する。そこは樹木に囲まれた岩場で、カマヤ海岸を間近で見るとこうなっているのだなと納得できた。これだけ苦労してたどり着いたのだから、プライベート使用できると思ったが、何人か先客はいるものだ。彼らもここを通って来たのだろう。たいしたものだ。せっかくだから仲良くシェアしよう。
 ここから車で10分のところに高嶋海水浴場がある。海水浴場としては全くマイナーではあるが、ここの砂浜は丹後半島の中で最も白いサラサラサンドでできている。砂は径が小さく、かつ石英成分を多く含むため、強風が吹けば地上高く舞い上がり、太陽の光を浴びてキラキラと虹色に輝く。こんな風景は他では見られない。
 さらに西の丹後町間人たいざには温泉「はしうど荘」が海を臨む岸壁に建っている。名勝「立岩」の真正面。夕方4時オープン、日帰り入浴500円。湯船につかれば海に沈む夕日、夜は漁火。近所の人が仕事帰りのひと時を過ごしている。
 穏やかに過ぎゆく時間と、まわりに広がる手つかずの自然は、ただただ我々を癒すのみ、何の見返りも求めない無償の愛となっている。
 はしうど荘は今では食堂、露天風呂、宿泊施設が付いて豪華になったが、以前は自動販売機があるだけの質素な日帰り温泉であった。丹後半島に数多くある日帰り温泉の中では、ここの湯船が最も海から近い場所にあり、ここから見る夕日が最も美しい。

カマヤ海岸
カマヤ展望台

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