医師法第21条の正しい理解を 異状死体等の届出義務で学習会  PDF

 医師法第21条の解釈について、異状死体の定義は各学会によって異なっているのが現状だ。そのためか過去には、院内で患者が死亡した場合は、異状死体と判断していなくても、念のためにほとんど警察に届けていた医療機関もあったが、都立広尾病院事件の最高裁判決(2004年4月13日)において医師法第21条にいう死体の「検案」とは、医師が死因等を判定するために死体の外表を検査することをいい、当該死体が自己の診療していた患者のものであるか否かを問わないと解するのが相当であると判断された。このことから、「外表」に異状が認められない場合は警察への届出義務は基本的にないと考えられる(協会発行:『事例で見る医療安全対策の心得』173頁参照)。
 医師法第21条の考え方について、以前から医療安全対策部会は会員各位に啓発してきた。しかし現在も、正しい概念が広く伝わっていないのではないか、あるいは正確に伝わっていないのではないかとの懸念がある。9月2日に理事者と事務局を対象に、東京保険医協会理事の佐藤一樹氏を講師に「医師法第21条の正しい理解と医療行為と刑事責任」をテーマとした学習会を開催。その主な内容を会員各位にお伝えして医師法第21条の正しい理解を促進したい。
 佐藤氏は、診療関連の死亡事故が発生したからといって、必ずしも医師が警察に届出する義務はない。医師には死体の外表検査で異状を認めた場合に限り届出義務があると強調した。そもそも診療関連死を警察に届けなければならないという誤解は、国立病院部政策医療課作成「リスクマネージメントマニュアル作成指針」に「医療過誤によって死亡または傷害が発生した場合またはその疑いがある場合には、施設長は、速やかに所轄警察署に届出を行う」と記載されたことや、2002年に日本法医学会が同会の異状死ガイドラインでの見解で「死亡に至る過程が異状であった場合にも異状死体の届出をすべきである」と強調したことにあると指摘した。
 これらを含め医師法第21条に関連する多くのガイドラインは、何ら法的根拠がなく、日本法医学会には同会の異状死ガイドラインを早急に書き直す責務がある―と強調した。
 協会は医事紛争としての死亡案件に対する相談を毎年受けている。医師法第21条については、医療事故を安易に刑事問題に発展させないためにも、確かな理解をもって対応するようお願いしたい。

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