術中ナビなど技術進歩著しく 直腸がんでもロボット手術  PDF

 外科診療内容向上会が京都外科医会、京都府保険医協会、科研製薬株式会社の共催で、メルパルク京都において11月17日に開催。京都外科医会副会長の古家敬三氏が進行し、40人が参加した。会では、まず科研製薬株式会社によるセプラフィルムRの情報提供に続いて、京都外科医会会長の谷口弘毅氏があいさつ。続いて、協会の茨木和博理事長代行があいさつし、茨木理事長代行と鈴木卓副理事長から保険医協会の事業内容を紹介した。

外科診療内容向上会レポート

 京都府立医科大学外科学消化器外科部門准教授の中西正芳氏を座長に、京都大学消化管外科講師の河田健二氏の特別講演「直腸癌に対する最新の手術治療~Navigation Technolo-gyのシンポを踏まえて~」が行われました。
 まず、直腸がん手術の歴史が紹介されました。開腹手術では Miles による腹会陰式直腸切断術、その後、直腸間膜全切除術(TME:total mesorectal excision)が標準となりました。2000年頃から腹腔鏡手術が導入され、腹腔鏡手術との比較がCOLORⅡ試験やCOREAN試験で行われました。これらでは腹腔鏡手術が開腹手術に劣らないことが示されましたが、その他の試験では非劣性は示されていないため、現在のところ、腹腔鏡手術が標準手術とはされていません。その後、肛門側から鏡視下に直腸間膜切除を行う Transanal TME(TaTME)が行われるようになりました。腹腔内からのみの手術とTaTMEとの比較がCOLORⅢ試験で行われましたが、結果は出ていません。最近、直腸がんの分野でもロボット手術が行われるようになり、ROLARR試験で腹腔鏡手術とロボット手術が比較されましたが、結果に差はありませんが、コスト面でロボット手術に相当問題があります。
 最近の技術進歩は著しく、直腸がん手術にも種々のナビゲーションが利用されています。まず、静注によるICG蛍光法を用いて腸間血流を視認して術後の合併症で最も重要な縫合不全を防止する方法が紹介されました。さらに、局注によるICGリンパ流評価が紹介されました。これらはいずれも特殊なカメラを用いて観察されます。TaTMEの際には尿道損傷が問題となりますが、発光ファイバーを尿道カテーテルに挿入しておいて鏡視下に尿道を視認できるようにする工夫が紹介されました。最後に、CTやMRI画像のどの部分を手術しているのかがわかる術中ナビゲーションシステムが紹介されました。直腸は腹腔内では比較的動きが少なく、カーナビのようなことができるのだそうです。
(上京東部・谷口 弘毅)

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