リハフォーラム詳細 さまざまな立場からリハビリ問題を発信  PDF

リハビリ制限の見直しを
 フォーラムではさまざまな立場から、6人がリハビリ問題を語った。
 理学療法士の立場から発言した夜久賢治氏(公益社団法人京都保健会京都協立病院)は、2000年からセラピストとして働いてきた。今日、当時に比べるとセラピストは増え、リハビリ時間も伸び、介護保険でリハビリを提供する施設も増えた。だがさまざまな制約が課されるようになり、必要なリハビリを患者さんに提供できているか悩みながら仕事をしている。制限とは、疾患別リハビリの算定日数制限であり、回復期リハビリ病棟における実績指数導入、維持期リハビリの介護保険移行問題である。リハビリを必要とする患者さん、利用者さんの状況は一人ひとり違うのに、疾患や病気によりリハビリの機会が制約されている現状を変え、個人に応じたリハビリを提供でき、本人が幅広い選択肢からリハビリを選べるようにする必要がある、と訴えた。

「心のケア」もリハビリ
 言語聴覚士の立場から発言した瀧澤透氏(京都光華女子大学教授)は、24歳で脊髄損傷となり、旧市リハセン附属病院に入院。施設に入り、訓練を受けた。その後、言語聴覚士の資格を取得した。今から思うと、現在のリハビリは機能主義である。時間を区切ってどう機能を高めるか、どう成果をあげるかに集中している。
 機能主義・成果主義は日本社会のすべてがそうなっている。だが、リハビリとは本来、そうではない。歩けないことがわかったとき、どう生きていくか。心を現実とどうすり合わせるのか。アイデンティティをどう再構築するか。これがリハビリの多くを占めると思う。
 自分が幸せだったのは、市リハセンでそれを考える時間を与えられ、同じように障害のある人たちと語り合えたことだ。今のリハビリはそれが許されない。
 心の問題をどう取り上げるのか。リハビリにとって大切なことではないかと考えている、と語った。

医療と介護の線引きに疑問
 開業医の立場から発言した増田和人氏 (増田医院院長)は、主として運動器慢性疼痛患者に対する無床診療所におけるリハビリの課題を報告。長期にわたるリハビリが必要な患者さんについての症例から、「運動器慢性疼痛患者に対するリハビリは治療経過が長く、維持期のリハビリが医療保険から介護保険に移行し、医療から切り離されてはできない」と訴えた。

リハビリ対象を疾患から個人へ
 回復期リハビリ病棟の実状については、フォーラム主催者が病院担当者からいただいたレポートを報告。回復期リハビリ病棟の入院患者のうち、高齢者の占める割合が高くなっている。高齢者は合併症によるリスクが高いこと、認知症を伴う症例が多いこと、在宅復帰が困難なケースも増加していることから、完全な機能回復を求め、在宅復帰率を問う現在の成果指標はまったくふさわしくなく、今のままでは病院がアウトカムを意識したリハビリしか提供しなくなってしまう危険性を指摘した。その上で成人と高齢者、また病態の違う患者を一律の疾患別・入院期間、算定日数制限で扱う診療報酬ではなく、対象を疾患から個人に移し、リハビリ提供をできる仕組みへ転換すべきと提言した。

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