都道府県内での医師の派遣調整  PDF

 地域医療支援センターを都道府県のコントロールタワーに、地域医療対策協議会で調整された事項に関する医師派遣事務、キャリア形成プログラム、派遣医師のキャリア支援・負担軽減を法定事務として行う。あわせて厚生労働省が地域医療支援センターを通じ、医師少数区域での勤務経験を積み、新たな「認定医」になることを希望する医師をデータベース化し、都道府県をまたいだ医師の配置調整も可能とする仕組みの検討が報告された。
キャリア形成プログラムの策定

 都道府県は、臨床研修から専門研修を通じ、都道府県内で不足する診療科を中心に複数コースを設定し、専門医取得も可能な大学病院、中核病院、医師不足医療機関のローテーションを組み込んだキャリア形成プログラムを策定する。さらに、「地域定着促進のための方策」として、プログラムの対象者である若手医師に対し、「満了するよう真摯に努力する」ことを求め、プログラム満了を修学資金の返金免除要件にするという。
 その他、▽医師の勤務負担軽減策▽地域医療への知見を有する医師の大臣認定▽臨床研修病院の定員設定等―が報告された。
 分科会では、「将来時点の医師偏在指標について」も新たに報告された。これは、現在のまま追加的な医師偏在対策を講じなかった場合の医師数の偏在を表す指標とされ、指標を用いて都道府県が将来時点の必要医師数を設定し、都道府県からの大学医学部の地域枠・地元枠の設定・増加の要請にも活用されるという。
 指標については、先に報告された現在時点の医師偏在指標の計算式における考え方に準じ、将来推計の要素を盛り込んだものとされる。〈将来時点〉については、2035年度末に終了する第9次(後期)計画終了後の36年とすることが提案された。
 将来の必要医師数については、「将来時点の医師偏在値が全国値と等しい値となる医師数」とすることが提案された。
 ここからあらためていえることは、医師偏在指標とはあくまで地域差を「見える化」する仕掛けでしかない、ということである。医師が相対的に多数である地域は、相対的に少数である地域に比べて、医療ニーズを相対的に満たし得るかもしれないが、それがすべての医療ニーズを満たしている状態であるかどうかは、最初から問題にされていない。
 にもかかわらず、多数区域の医師を都道府県の調整によって少数区域へ回す取組が、都道府県の地域医療支援センターの法定事務とされる。
 本紙が繰り返し指摘してきたように、医師数・病床数の格差が医療費の地域差を生むとの認識から、これらの政策は出発している。医療費抑制策としての偏在是正が地域にもたらす負の影響はないのか、引き続き検証を進めたい。
 なお、今号では京都大学医学部名誉教授である小泉昭夫氏より今回明らかにされた医師偏在指標について寄稿いただいている。ぜひお読みいただきたい。

図1 二次医療圏の目標医師数の設定イメージ

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