丹後半島 心の原風景 第1話 辻 俊明(西陣)  PDF

魅力を再発見! 丹後半島

 京都府は海の京都(丹後)、森の京都(丹波)、お茶の京都(宇治)と名付けて各地域をアピールしている。なかでも海の京都、特に丹後半島には他にはない自然の美しさがある。
 たとえば半島北部のカマヤ海岸(経ヶ岬から伊根町蒲入まで)(写真1)と呼ばれるリアス式海岸は、ここが京都かと思うほどの絶景を見せてくれる。天気のよい日には崖や山の間から青空と海が開けて見え、太陽を浴びた浅瀬の水面はエメラルド色に揺らめく。断崖絶壁に生い茂る草木の緑は、海の青とコントラストを成す。ここにあるのは手つかずの鮮やかな自然。透きとおった空気の中でこれらの景色を目の当たりにする時、ただ畏敬の念をもってたたずむことしかできない。
 また半島の北西部(琴引浜~網野~久美浜)には、まっ白な砂浜が続き、夏の晴れた日には白い砂浜に青い海という絵にかいたような風景となる(写真2)。浜を歩くとキュッキュッという音がするため、ここの砂は鳴き砂と呼ばれている。琴引浜が有名であるが網野、久美浜でも砂は鳴く。ここをキュッキュッと歩いていると、青春のストーリーがもう一度よみがえり、初恋のあの娘と手をつないで砂浜を駆けだしそうな予感がする。また強い風が吹くと地上数メートルまで砂が舞い上がり、太陽の光が当たって、時にはダイアモンドダストのようにキラキラと輝く。これらは砂の粒が小さく、かつ石英を含んでいるために起こる現象で、私が調べた範囲では、丹後半島周辺にはこのような砂浜は、久美浜より西~兵庫県にも、経ヶ岬より東~由良~福井県にもない。由良より東では砂径が大きくなり、サクサク感はなくなる。福井県では高浜を除いて砂浜に小粒の石が混ざり、高速増殖炉もんじゅ近くの水晶浜は砂というより小石でできている。地形や海流の影響などのため丹後半島北西部のここだけにこんな神秘的な鳴き砂ができたのだろう。
 自然美以外にも興味深いものは沢山ある。
 私は20数年前、与謝の海病院(現府立医大北部医療センター、京都府与謝郡)に2年間勤務したことがあり、「丹後エクスプローラー」という列車に乗って京都市と丹後を往復していた。以来この列車の名のように丹後を探求してきたので、今後9回にわたってオリジナルな楽しみ方を紹介する。

(写真1)リアス式海岸のカマヤ海岸
(写真2)まっ白な砂浜がつづく半島北西部

筆者プロフィール
京都府立医科大学卒業(1982年)、京都府立医科大学大学院修了(88年)、京都府立医科大学眼科学教室助手、米国ミシガン州立オークランド大学留学(2年間)、与謝の海病院眼科医長、済生会京都府病院眼科部長、社会保険京都病院眼科部長、辻眼科医院(98年)

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