富士山 関 浩(宇治久世) 第12回 吉田口(須走口)頂上到着  PDF

 白木の鳥居3570mを越すと九合目迎久須志神社むかえくすしじんじゃ標高3600mがある。一昔前はこちらで九合目の焼き印を押してもらえたが、現在は閉鎖されている。
 ここから砂地や砕けた赤い岩がゴロゴロする道になり、歩きづらい。山頂直下150mは再び岩場になる。見上げれば山頂はすぐそこ! 曲がり角で小学高学年の児童、父親から簡易酸素ボンベで吸入をしてもらいながら、頭が痛いとワンワン泣いている。母親は「はしゃぎすぎるからよ」と全くクール。のちほど頂上で再会すると男の子はもうケロリとしていた。
 狛犬とともに建つ山頂直下の鳥居(写真1)、 鳥居とりい御橋おはしを登り、最後に大きくジグザグを切り、石段を上ってコーナーをまわれば、久須志神社の建つ吉田口頂上に、11時過ぎ到着(写真2)。山小屋を出発して正味4時間余を要した。
 念願かなって歓声を上げる人、有難うと肩を抱き合う人、苦しかった道のりを振り返って涙ぐむ人とさまざまな喜びが見られる。
 久須志神社については、元々は薬師堂と呼ばれていた。須走浅間神社が薬師堂の開帳・入仏などを行っていたため、基本的には須走浅間神社が管理していたものである。厳しい気候、経年劣化により建物が朽ちていたため、元禄15(1702)年には浅間大社が薬師堂を造営した。明治に入り、廃仏毀釈により仏教名は改名され、同時に富士山本宮浅間大社の奥宮の末社として管理されることになった。別名、東北奥宮と称する。
 山頂には4軒の山小屋が並び、どこもにぎわっている(写真3)。温かい麺類や豚汁が食べられ、冷えた身体を温めることができる。昨日より初めて空腹を覚え注文した味噌ラーメンは量が物足りないことを除けば美味しかった。
 最初目を疑ったが、小屋の前の休憩所前にあるのはまぎれもなく飲料水の自動販売機(写真4)(ここで自販機とは!)。ポカリスエット700円を買い下界を見下ろす休憩所で一休みした。
 富士山には自動販売機があるが、頂上に近づくほど値段が高くなり、山頂付近ではミネラルウォーター500mlが1本500円となっている。富士山に運ぶ場合、まず五合目まではトラック、その後ブルドーザーを使って自動販売機がある場所まで運び、飲料を補充する。また、自動販売機を動かすための電気は自家発電機によって作られており、このように、輸送コストや維持のための発電費用などの経費がかかるため、当然、値段は高くなっていく。

(写真1)狛犬とともに建つ山頂直下の鳥居、頂上はもう目の前
(写真2)久須志神社の建つ吉田口(須走口)頂上、早朝はご来光を待つ人で混雑する
(写真3)吉田口(須走口)頂上の山小屋
(写真4)飲料水の自動販売機、缶コーヒーが猛烈に熱い

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