知っておきたい 医院のための雇用管理11 最終回  PDF

社会保険労務士 桂 好志郎

マタハラを防ぐため、企業への指導を厳しくするように労働局に指示
妊娠・出産と不利益取扱い
時期近いと「違法」

 厚生労働省によると妊娠・出産等を理由とする不利益取扱い等の相談件数は、09年以降毎年コンスタントに3千件前後で高い水準で推移しています。これはあくまでも氷山の一角で深刻な状態が常態化しているとみられています。
 マタニティハラスメントを防ぎ、被害の拡大を食い止めるために、厚生労働省は、全国の労働局に積極的に事業主に対して報告を求め、または助言、指導もしくは勧告を実施するように通達を発出しました。
 ◇5人に1人がマタハラ被害者に
 男女雇用機会均等法、育児・介護休業法で禁止されている事例
 以下のような事由を理由として
 ①妊娠、出産
 ②つわり、切迫流産などで仕事ができない、労働能率が低下
 ③時間外労働をしない
 ④短時間勤務
 ⑤子の看護休暇
 不利益取扱いの例
 ①解雇
 ②退職や正職員を非正規職員とするような契約内容変更の強要
 ③降格
 ④賞与等における不利益な算定
 ⑤不利益な自宅待機命令
 ◇解釈通達のポイント
 妊娠・出産、育児休業等を「契機として」不利益取扱いを行った場合
 原則 男女雇用機会均等法、育児・介護休業法に違反(妊娠・出産、育児休業等を「理由として」不利益取扱いを行ったと解される)
 例外①
 ○業務上の必要性から支障があるため当該不利益取扱いを行わざるを得ない場合において
 ○その業務上の必要性の内容や程度が、法の規定の趣旨に実質的に反しないものと認められるほどに、当該不利益取扱いにより受ける影響の内容や程度を上回ると認められる特段の事情が存在するとき
 例外②
 ○契機とした事由または当該取扱いにより受ける有利な影響が存在し、かつ、当該労働者が当該取扱いに同意している場合において
 ○有利な影響の内容や程度が当該取扱いによる不利な影響の内容や程度を上回り、事業主から適切に説明がなされる等、一般的な労働者であれば同意するような合理的な理由が客観的に存在するとき
 例外①②とも違反には当たらない。
 なお、「契機として」については、基本的に当該事由が発生している期間と時間的に近接して当該不利益取扱いが行われたか否かをもって判断すること。
 医療機関は女性職員が多く「仕事」と「家庭」の両立を図りつつ仕事を継続できる環境の整備と、周囲の理解も必要です。

妊娠時に、職場で、妊娠・出産やそれにともなう体調不良をきっかけにした不利益な取扱いや嫌がらせを受けたか【複数回答形式】

降格、重要な業務を任せてもらえない、意に反して担当業務を変更する、などの対応をされた(3.3%)
受けなかった(79.1%)
口頭などで嫌がらせを受けた(9.8%)
解雇、契約更新をしない、などの対応をされた(7.8%)

受けた(計)
全体:20.9%(正社員・正職員が24.4%と最も多い)

資料出所:働く女性の妊娠に関する調査

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