開業医医療の重要性浮き彫りに 地域医療への情熱は共通  PDF

シンポ イタリア家庭医と日本の開業医の未来

 協会は非営利協働総合研究所いのちとくらしと共催で、シンポジウム「イタリア家庭医と日本の開業医の未来」を6月17日に京都で開催した。参加者は20人。冒頭、立命館大学教授の松田亮三氏が「イタリアの医療機構の概要」と題して解説した。続いて、イタリア、ボローニャの家庭医であるフランチェスコ・ビアヴァーティ氏がイタリアの医療について講演。その後、垣田さち子理事長が「日本の開業医」を、上京診療所所長の高木幸夫氏が「日本の家庭医の活動」を、右京医師会会長の高島啓文氏が「医師会と地域医療」をテーマに報告を行った。以下、吉中理事の報告を掲載する。

世界と比較して見えてくる日本の医療

 去る6月17日午後、協会と非営利協働総合研究所いのちとくらしの共催で、イタリア家庭医・ビアヴァーティ先生による講演とシンポジウム「イタリア家庭医と日本の開業医の未来」が行われた。垣田さち子理事長が2016年の保団連医療研究フォーラム京都アピールの趣旨を活かして司会ならびに報告をした。ビアヴァーティ先生はボローニャの家庭医でイタリア全国家庭医組合(SNAMI)の理事長を16年まで務められた。70歳になり定年を迎えたとのことだ。
 戦後イタリアの医療制度は共済保険(日本の医療保険に相当、給付内容は各共済によって異なる)により、委託医(各共済に医師が申請する)が診療するやり方であった。イタリア共和国憲法32条(健康を個人の基本的権利と定め貧困者への無料の医療保障を明記)にもとづき、1978年にイタリア国民保健サービス制度(SSN)が制定される。国際的には福祉国家的な普遍主義的医療制度と分類されている。医療提供はASL(地域医療事業体。全土で107ある)を介して行われる仕組みとなった。
 これにより家庭医はASLへ登録し、地域住民はその名簿から自分がかかる家庭医を選択する。家庭医1人当たり1000~1500人の患者を受け持つことが決められている。家庭医には人頭割の報酬(行った治療ではなく、契約患者1人当たり月6ユーロ。半分は税に徴収されるとのこと)がASLから支払われる。SNAMIのような家庭医医師組合は四つあり、ASLと契約更改交渉を行ってきている。
 ビアヴァーティ先生は家庭医の立場からSSNの現状に対していくつか批判的な意見を述べた。人頭割報酬のため患者からのフィードバックがかかりにくく家庭医の質が保てないこと、人頭割によって家庭医枠が決まっているため家庭医専門課程修了者が参入できずに失業状態にあること、増大した事務作業が診療業務を凌駕していること、家庭医がBクラスの医師とみられていることなどである。家庭医のオフィスには血圧計と聴診器があるだけなので、採血やレントゲンなどの検査は、すべて地域にある各々の施設に紹介(チケットを切る方式)しなければならない。MRIの撮影や手術などはSSNでは無料であるが、数カ月以上待つことになる。待てなければSSN枠外の自由診療を使うが、高額の負担が必要になる。中央政府による医療費削減政策のため患者の負担増は、深刻になっている。また、病院医師との連携が不足していることを問題として指摘した。
 日本側からの報告は、①日本の開業医医療について(垣田さち子理事長)②日本の家庭医の活動(高木幸夫医師、上京診療所所長)③地域医療を支える医師会活動(高島啓文医師、右京医師会会長)―の3本であった。
 国情は異なるが、地域医療に対する医師の情熱は共通していることを感じることができた。日本の開業医医療の優れている点や医師会・保険医協会といった医師の自主的な組織活動の重要性が浮き彫りになったと考える。さらに、経済第一主義的な医療費削減政策を許してはならず、保険医運動の大切さを改めて確認できた。(理事・吉中 丈志)

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