環境問題を考える 138  PDF

リニアは公害のデパート?
 現在建設が始まっているリニア中央新幹線は磁気の力で走行するため、乗客のいる車内の空間にも強い磁場が生じる乗り物だ。リニアは新幹線の3倍の電力を必要とし、その分強力な電磁波を発する。報告によれば、実験線の場合、床上で6千~4万ミリガウス(国立環境研究所、05年)にもなる。高圧線など電力設備の電磁場については4ミリガウス(0・4マイクロテスラ)の居住環境で小児白血病が2倍とする報告が日本でも出されており、海外でも同様のレベルの電磁場で同様のリスクが繰り返し報告されている。
 リニアの磁場はその1万倍にもなる強さだということになる。乗客がどれだけ電磁波を浴びるのか、JR東海は住民説明会で具体的な数値を出していない。1回だけ、ぎりぎりペースメーカーに影響しないような数値を出したのみなのである。
 さらに、リニアの外の電磁波の問題もある。電力を賄うために、柏崎刈羽原発から日本で初めて50万ボルトという、高圧線を設置した。しかし、高圧線周辺では、常に電磁波の健康問題が発生する。しかもリニアの電力消費は既存の新幹線の3倍であり、それだけでなく大規模なトンネル工事で河川の流量減少、発生残土の処理も懸念されている。
 大きな環境破壊問題を引き起こすだけでなく、柏崎刈羽原発の再稼動など結局は国民の健康や生命を重大な危機にさらし、開業後の事業採算は極めて困難で、運営上のリスクも高く、投資回収も不可能である。つまりは採算性もなく決して安全でも快適でもない。リニア建設にストップをかける勇気はこの国には存在しないのだろうか。
(京都府歯科保険医協会 副理事長 平田 高士)

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